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凍結融解胚移植におけるホルモン補充周期と自然周期
(2021.7月)
体外受精において凍結融解胚移植を行う際に、完全に薬でコントロールをする「ホルモン補充周期」と、自然な排卵後に移植をする「自然周期」があります。
まず、当院で主に行っている「ホルモン補充周期」についてご説明します。
ホルモン補充周期とは、エストラジオールのホルモン剤とプロゲステロンのホルモン剤を使用し、受精卵が着床しやすくするように子宮内膜を整えてから移植を行う周期のことです。このホルモン補充周期には次のようなメリットがあります。
- ・完全に薬でコントロールをするため、移植日を調整することや予定日を確定させることができる。
- ・移植日までの通院回数を少なくすることができる。
- ・安定したホルモン環境を作り上げることができる。
- ・自然に排卵が起こらないような排卵障害の方にも行うことができる。
しかし、デメリットもあります。
エストラジオールを皮膚から吸収させるテープタイプの薬を使用する場合がありますが、そのテープで肌がかぶれてしまうことがあります。また、ホルモン剤を使うことで不正出血が起こることがあります。
さらに、妊娠判定が陽性になった場合、自然排卵後にできるホルモンを分泌する黄体がないため、胎盤からのホルモンが分泌されてくる妊娠9週ごろまでホルモン補充を必要とします。
次に「自然周期」での移植法ですが、ホルモン値と超音波による卵胞径の測定をして卵胞成熟を確認し、排卵時期を特定して、胚を移植するタイミングを決定します。
スケジュールが組みにくい方法ですが、ホルモン剤を使用しない、もしくは排卵を確実に起こすためのHCGの注射または点鼻薬のみと、使用する薬を最小限に抑えることができるという自然に近い方法です。
しかし、排卵日が特定されてから移植日が決定するので日程の調整が不可能なことや、移植日がクリニックの休診日にあたる場合にはキャンセルになる場合があります。
また、正常な排卵が起こらなかった場合などもキャンセルになるというデメリットがあります。
当院では、移植がキャンセルになることが少ないホルモン補充周期で主に凍結融解胚移植を行っていますが、実際にどちらで行うかは相談の上で決定させていただきます。
院長 保坂 猛
監修

- 三軒茶屋ウィメンズクリニック院長
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三軒茶屋ウィメンズクリニック開院以来、月経異常、子宮内膜症、更年期障害、婦人科ガン検診等の婦人科領域治療、また、一般不妊治療をはじめ、体外受精、胚移植、顕微授精、胚凍結などの高度生殖補助医療等をオーダーメイドにて提案産婦人科医として、患者様の心身への負担を軽減する最適な治療をご提供し、妊娠率向上にむけた取り組みをおこなっている。
●プロフィール
聖マリアンナ医科大学卒業後、産婦人科勤務
大田原赤十字病院勤務
聖マリアンナ医科大学産婦人科医長、聖マリアンナ医科大学産婦人科非常勤講師
ファティリティクリニック東京勤務を経て、
2011年2月2日三軒茶屋ウィメンズクリニック開院
●保坂先生の体外受精説明会はこちら
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