月経の回数や経血の量が少ないのはなぜ?月経不順・過少月経の原因や治療法を紹介

月経の回数や経血の量が少ない場合、サニタリー用品を交換する手間が避けられるため快適に感じるかもしれませんが、実際には身体の不調や何らかの疾患が潜んでいる可能性があります。
そのため、月経の頻度や経血の量が正常でない場合は、早めに医療機関を受診することが推奨されます。
では、これらの症状はどのような原因によって引き起こされるのでしょうか。
この記事では、月経の回数や経血の量が少なくなる原因、治療法について紹介します。
経血が少ない・量が少なくなった人や、月経が来なくなったり頻度が下がったりした人は参考にしてください。
月経の回数が少ない原因

月経周期が長く頻度が低い月経を稀発月経といいます。1年で月経が来る回数が10回以下である場合に疑われる症状です。
また、毎月来ていた月経が3ヶ月以上停止する状態のことを続発性無月経といい、いずれも月経の回数が少ないという特徴があります。
稀発月経や続発性無月経の原因には、以下のものが考えられます。
精神的・身体的なストレス
心身のストレスが影響すると、月経が来なくなるケースがあります。
人間関係や生活環境が変わることで過度なストレスを受けると、月経に関わるエストロゲンとプロゲステロンの分泌が不安定になり、月経が停止する可能性があります。
また、疲労や寝不足などの身体的なストレスも月経不順の原因になるため、月経のリズムを整えるために早めに解消しましょう。
急激な体重減少
短期間で急激に体重が減少したり、食事量を過度に減らしたりすると、月経の頻度が下がったり来なくなったりしやすいです。
身体にこれらの異変が現れると、軽い栄養失調を起こした状態になるため、脳の視床下部が正常に機能せず、女性ホルモンの分泌に問題が生じます。
その結果、月経を起こすホルモンのバランスが崩れ、月経が遅れたり止まったりします。
妊娠の可能性がある
妊娠すると月経が来なくなるため、月経が止まった場合は妊娠検査薬などで妊娠の有無を確認しましょう。
避妊法によっては妊娠を完全に防ぐことはできないため、自己判断で妊娠の可能性がないとは決めつけず、念のため検査を受けるのが推奨されます。
人によっては、妊娠していなくても数ヶ月のあいだ月経が来なくなるケースもありますが、妊娠の疑いがある場合は検査を受けることをおすすめします。
閉経が近い
閉経が近くなると、月経が来なくなったり回数が減ったりします。
一般的な閉経の年齢は約50歳とされていますが、人によっては40代で閉経するケースや55歳以降も月経があるケースもあります。
閉経前になると妊娠に必要な卵巣機能が少しずつ衰えていくことで、徐々に月経の回数が減っていきます。40歳前に月経が終了する早期閉経では、卵巣不全によって妊娠できなくなるため注意が必要です。
卵巣や甲状腺の疾患がある
月経の回数が減ったり止まったりする原因には、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や、バセドウ病・橋本病などの甲状腺ホルモンの分泌異常をきたす疾患などが考えられます。
PCOSは、20〜50歳の女性に5%前後の割合でみられ、稀発月経や無排卵を引き起こします。
また甲状腺の分泌異常があると不妊や流産の原因にもなるため、内分泌科や代謝内科、耳鼻咽喉科などの受診が必要です。
無排卵症がある
無排卵症があると月経不順になりやすくなるため、月経が遅れたり回数が減ったりします。
無排卵症とは、月経時の出血はあるのに約1ヶ月に1回あるはずの排卵が起こらない状態で、ホルモンバランスの乱れや何らかの疾患が原因だとされています。
無排卵症では妊娠ができず、放置することで子宮体がんや骨粗しょう症のリスクが高まるため、早めの治療が必要です。
経血の量が少ない原因

1回の月経でみられる経血の量が20mlと少ない状態を過少月経といい、以下の原因が考えられます。
女性ホルモンの分泌低下
女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌量が低下すると、過少月経になりやすいです。
エストロゲンには子宮内膜を厚くする役割があるため、減少すると経血の排出量が少なくなります。
食生活の偏りやストレス、睡眠不足はエストロゲンの分泌量を減少させる要因です。
またプロゲステロンには子宮内膜をはがして子宮内をきれいにする役割があるため、減少すると十分に子宮内膜を排出できず、出血が少量になります。
女性ホルモンが乱れると排卵障害を引き起こすリスクがあるため、早めの治療が大切です。
ホルモン治療を受けている
月経困難症や子宮内膜症などの治療でホルモン治療を受けている場合、過少月経になる可能性があります。
これらの治療には子宮内膜を薄くする作用があるため、経血の量が減少しますが、過多月経の改善に対して有効で、副作用や異常などではありません。
また、治療の一環でピルを服用している場合も同様に経血量が減少するケースがあります。
過少月経の原因が治療によるものなのか分からない場合は、行きつけの婦人科に相談しましょう。
子宮や甲状腺の異常
子宮の異常や甲状腺機能亢進症などの疾患があると、経血量が減少しやすいです。
子宮内膜掻把や流産手術などの処置を繰り返している場合や、子宮内膜が細菌感染を繰り返している場合は、癒着を起こしている可能性があります。
その結果、子宮内膜の癒着を起こしていない範囲が狭くなり、過少月経を引き起こします。
また甲状腺機能亢進症では、血液凝固に関する仕組みが活発になることで出血が妨げられやすいです。
過少月経以外に動悸や大量の発汗などの症状を伴う場合は、甲状腺の疾患を取り扱う医療機関を受診しましょう。
子宮の発達が未熟
子宮の発達が未熟だったり発育不全があったりすると、過少月経になるケースがあります。
子宮が元々小さかったり生まれつき子宮に先天性の奇形があったりすると、経血の量が減少する可能性があります。
また婦人科疾患の既往歴や手術歴がある場合は、子宮の癒着によって月経周期が乱れやすくなる傾向があるため、定期的な受診による経過観察が必要です。
月経の頻度や経血の量が少ない時に必要な検査

月経の回数や経血の量が少ない場合には、以下の検査によって原因を明確にする必要があります。
血液検査
血液検査では、各ホルモンの血中濃度を測定します。
月経のトラブルにはホルモンが影響している可能性が高いため、血液検査によって分泌異常がないかを調べることが大切です。
エストロゲン・プロラクチン・卵胞刺激ホルモン・甲状腺ホルモンのほか、男性ホルモンであるテストステロンの値も検査します。
超音波検査
超音波検査では、卵巣の大きさや発育状況、子宮内膜の厚さなどを測定します。
超音波を発する細い棒を膣内に挿入して検査するため、人によっては抵抗感を伴いますが、検査時間は数分で済み、基本的には痛みもほとんどありません。
子宮や卵巣のがん、子宮内膜症、子宮筋腫などの異常の発見が可能です。
CT・MRI
月経が来なくなった場合は、CTやMRIなどの画像検査を行います。
CTは、X線を照射して子宮や卵巣などの断面の連続した写真を撮ることで、器官の様子を立体的に把握する検査です。
MRIは、磁石と電波を用いてさまざまな方向から身体を撮影した断面を画像にする検査で、放射線被爆のリスクがありません。
いずれの検査も、超音波検査と比較して病変の詳細な様子が観察できるのが特徴です。
月経の頻度や経血の量が少ない時に必要な治療

月経の回数や経血の量が少ない場合には、必要に応じて以下の治療を行います。
低用量ピル
低用量ピルは、月経不順や過少月経を引き起こす疾患の治療に用いられる錠剤です。
エストロゲンとプロゲステロンが配合されているため、服用することでホルモンバランスを整え、月経周期を正常に戻す効果が期待できます。
また、過少月経を引き起こす黄体機能不全や、多嚢胞性卵巣症候群の治療法としても選択されます。
漢方薬
漢方薬は、過少月経のさまざまな原因に働きかけ改善を目指すのに効果的です。
腎機能の低下による血液量の不足や、血流が悪くなることで引き起こされる過少月経を改善する効果があるほか、過多月経の治療に用いられるケースもあります。
婦人科疾患で用いられる漢方薬にはさまざまな種類がありますが、専門的な知識と問診に基づく適切な判断力が必要です。
また漢方薬には即効性がないため、早い段階で使用することで体質から改善し、症状を予防することが大切です。
ホルムストローム療法
ホルムストローム療法は、ホルモン治療の一種で、無排卵が原因で引き起こされる月経不順に対して選択される治療法です。
黄体ホルモン製剤の投与と子宮内膜の排出を周期的に行うと、排卵と月経が自然にみられるようになります。
子宮内膜がはがれず、エストロゲンの分泌のみが続くと、子宮内膜がんのリスクが高まるため、悪性化を防ぐ目的でも行われる治療です。
カウフマン療法
カウフマン療法は、エストロゲンと黄体ホルモンの両方の分泌異常が原因でみられる無月経に対して行われます。
エストロゲンの投与で子宮内膜を厚くし、その後黄体ホルモン製剤を加えて、排卵後と同じ状態の子宮内膜を作り出すことで排卵と月経を誘発します。
薬剤はいずれも内服薬であるため、服用のタイミングや期間は医師の指示に従いましょう。
手術による治療
器質性疾患によって経血の量が減少している場合は、必要に応じて手術による治療を受けなければいけません。
子宮形態異常や子宮内癒着、子宮の発育不全がある場合は、子宮を正常な形状に整えたり異変を取り除いたりするための内視鏡手術が検討されます。
必ず手術が選択されるわけではなく、症状の重さやその他の異常の有無などを考慮して、必要がない場合は行わないケースもあります。
またホルモン治療が有効な場合には、手術を選択しない可能性が高いです。
まとめ
月経の頻度や経血の量が少ない原因、治療法について紹介しました。
月経が来なかったり、出血の量が少なかったりすると、心穏やかだと感じる人も多いでしょう。
しかし、これらの症状は疾患のサインであったり、将来の妊娠や出産に悪影響を及ぼしたりする可能性があるため、早めに婦人科を受診しましょう。
三軒茶屋ウィメンズクリニックでは、患者様と相談しながらより良い治療法を提案します。
多数の病院施設と連携し、協力医として登録しているため、さまざまな症例に対応が可能です。
原因がわからない月経不順がある人や、月経に対して心配な点がある人は、ぜひ一度ご相談ください。