人工授精とは?
人工授精とは?
最初に行う不妊治療が排卵日に夫婦生活をもつ「タイミング法」であるのに対し、次のステップである「人工授精」とは、AIHとも呼ばれる不妊治療のひとつで、採取した精液の中から良好な精子を分離し、子宮内に直接注入する方法です。
つまり人工授精は、子宮まで精子を入れるので精子と卵子の距離を近づけることができますが、その後は自力で精子が卵管まで移動して卵子と受精するため、受精から妊娠までの経過は自然な妊娠と変わらないナチュラルな治療法といえます。
ナチュラルであるがゆえに、人工授精で生まれてくる子供に異常が出やすくなるなどの影響はありません。
人工授精の対象となる方
人工授精は、主に以下のような夫婦が対象となります。
- 不妊原因が不明で、タイミング法で妊娠に至らない場合
- 男性のEDや射精障害
- 精液所見が不良
- フーナーテストの結果より、精子が子宮頸管を通過しにくい
また、出張などの理由で排卵日にタイミングがとれない場合には、あらかじめ保存した凍結精子を使用して人工授精を行うことも可能です。
人工授精の流れ
① 生理が始まったら医師と相談をし、自然周期で行うのか、排卵誘発剤を使用するのかなどを決定します。
自然周期と排卵誘発周期での妊娠率は排卵誘発周期のほうが高まりますが、多くの卵胞が発育することで卵巣が腫大し腹水や胸水が貯まる卵巣過剰刺激症候群や、双子などの多胎妊娠となるリスクが伴います。
② 超音波検査により正確な排卵日を予測します。
排卵のタイミングに人工授精を行うことが非常に大切です。
③ 排卵日が近いと判断されると、注射後36時間ほどで排卵を起こすhCG(ヒト絨毛ゴナドトロピン)を打ちます。
④ 人工授精当日に、自宅かクリニックで精液を採取します。
自宅採取の場合は保存容器に入れてなるべく2時間以内に持参してください。
当日に採取できない場合は、凍結精子を使用することも可能です。
⑤ クリニックで精液を洗浄濃縮し、混じっている細菌や白血球などを取り除き、良好な精子を分離します。
精液をお預かりしてから実施までに約40~60分程かかります。
⑥ 洗浄濃縮された精液を細いチューブに入れ、子宮の内腔に注入します。
子宮に屈曲などがなければほぼ痛みはありません。
人工授精当日はシャワー浴のみとなりますが、それ以外は普段通りの生活を送っていただいて構いません。
⑦ 1週間後に超音波検査を行い、排卵したことを確認します。
⑧ 生理予定日以降に尿検査や血液検査で妊娠判定を行います。
治療に入る前に、夫の感染症検査が必要となります。
費用は8800円で、結果が出るのに1週間ほどかかります。
また、夫婦別姓や事実婚の場合は、原則双方の戸籍謄本を提出していただきます。
人工授精の妊娠率
人工授精の妊娠率は、1回あたりで5~10%です。
通常の妊娠率よりも低く感じてしまいがちですが、通常の妊娠は不妊症ではない方の妊娠率であり対象が異なるため、成功率が低いとは言い切れません。
妊娠率は人工授精の回数を重ねるごとに下がっていきます。
人工授精を行って妊娠した方の90%は5回目までに妊娠したとのデータがあることから、5~7回を目安に体外受精へステップアップを検討するのがよいでしょう。
人工授精のメリット
- 自然妊娠に近いかたちで受精をさせることができる。
- 治療の際にほぼ痛みがなく、身体への負担が少ない。
- 繰り返し治療がしやすい。
人工授精のデメリット
- 体外受精と比較すると成功率が低い。
- 子宮が炎症を起こす可能性がある。
- 排卵誘発剤を使用することで多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群になる可能性がある。
- 統計的に7回目以降で妊娠する可能性は低い。
- 健康保険の適用外である。
人工授精の費用
費用は、精液検査代込みで18000円となります。
各自治体が独自に導入している助成金制度が適用される場合があります。
例として、東京都の不妊検査等助成制度においては、5万円を上限に助成があります。
今回は、人工授精とは何か、またそのメリット・デメリットについてお話しました。
ご夫婦で基礎知識を身に付け、しっかりと相談した上で人工授精にトライしていただきたいと思います。
ラボチームスタッフ
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