卵巣刺激方法(低刺激法~中刺激法)

 卵巣刺激法として、「ロング法」、「ショート法」、「アンタゴニスト法」について前回お話しましたが、これらは連日注射を打つ必要があり、通院が困難であることや、刺激が強い為、次の周期は卵巣を休ませるなどの対応が必要です。
そこで、低刺激法という方法が生まれましたが、月経スタート直後の検査を含め採卵までに3~4回ほど通院すればよいことが多く、経済的な負担も少ないというメリットがあります。


 しかし、低刺激法は、高刺激法に比べて1度に採れる採卵数が少ないということがデメリットとしてよく言われます。
1度に多くの卵子を採卵できたほうがいいのは確かではありますが、抗ミューラー菅ホルモン(AMH)が低い方の場合は、高刺激法で卵巣刺激をしたとしても採卵数はそれほど多くは期待できませんので、低刺激法は無理なく効率的に行える方法のひとつと考えられます。

 低刺激法には、薬の力を借りずに卵子を育てる「完全自然周期」、クロミッドやレトロゾールという経口の排卵誘発剤を服用しながら卵子の発育や排卵をコントロールする「クロミフェン法」、「レトロゾール法」などがあります。

完全自然周期

 原則として経口、注射にかかわらず、排卵誘発剤を使用しない。

《メリット》

  • ・排卵誘発剤を使用しないため、身体への負担が少ない。
  • ・連続した周期に採卵が可能である。
  • ・凍結をせずに移植が可能であり、費用は最も低くなる。

《デメリット》

  • ・月経周期が不順な場合は行うことが難しい。
  • ・卵子が採れないときがある。

クロミッド法

 クロミッドを月経周期3日目より服用を開始し、HMG注射などを併用して卵胞発育を調整する。なるべく自然に近い方法で、卵子を2~3個採りたい場合が適応である。

《メリット》

  • ・連続した周期に採卵が可能である。
  • ・1周期あたりの費用は低めである。

《デメリット》

  • ・子宮内膜が薄くなるため、凍結保存をして別の周期に融解胚移植をすることが多い。
  • ・採卵数が少なく、不成功の場合はまた採卵から実施することとなる。

レトロゾール法

 もともと閉経婦人の乳がん治療を適応とする内服薬であるレトロゾールは、男性ホルモンを女性ホルモンに転換する酵素を阻害する為、短期間内服すると、①女性ホルモンの一過性の低下に伴い、脳下垂体からのFSH(卵胞刺激ホルモン)分泌増加 ②卵巣内における男性ホルモンの一過性の増加に伴い、FSH受容体増加という2つの効果により卵胞発育を促進する。

《メリット》

  • ・子宮内膜が薄くならない。
  • ・クロミッドが効かないような場合でも卵胞が発育することがある。
  • ・乳がんの既往がある場合にも使用が可能である。

 どの卵巣刺激法が適しているかは、AMHなどのホルモン値や卵巣の反応によって選択をします。
しかし、このようにして選択した刺激法でも、必ずしもいい結果が得られるとは限りません。その場合は同じ方法を続けるのではなく、刺激法を変更することも考える必要があります。

 初回は年齢やホルモン値などを参考に、最も合いそうな方法を選択しますが、実際にやってみなければわからない部分も多く事前に予想した反応にならないこともあります。

院長 保坂 猛

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