妊娠率について

妊娠率について

 まず妊娠の定義についてですが、一般でも検査のできる尿妊娠反応検査は、尿中に排出されたhCG(胚の絨毛から出てくる妊娠特有のホルモン)をチェックする検査です。hCGの値が25~50mIU/mlを超えると尿妊娠反応陽性になります。
そして、血液のhCG測定をすることで、非常に初期の妊娠判定が可能となります。血中hCG値が5mIU/ml以上で着床があったと判断しますが、ARTの妊娠においては、子宮内に胎嚢を確認できた場合を妊娠と定義するのが一般的です。
胎嚢が見える前に血中hCG値の上昇が見られただけの妊娠(生化学的流産)に関しては妊娠から除外されます。妊娠の判定をどこに設定するかで妊娠率は変わってきます。
また、ARTの妊娠率には様々な表現方法があり、妊娠率を計算する場合、その母数を何にしたかで表現が変わります。


 例えば5人の患者さんが12回の治療周期を受け、2回は採卵がキャンセルとなり、10回の採卵、新鮮胚と凍結胚をあわせて9回の胚移植を受け、3人の方が妊娠した場合を例に挙げて説明します。

①対患者妊娠率
患者さんあたりの妊娠率です。上記の例では、対患者妊娠率60%(3妊娠/5患者)と表現します。

②対治療周期妊娠率
ARTの計画を立て卵胞刺激まで行った周期を母数にしています。
上記の例では、対治療周期妊娠率25%(3妊娠/12治療周期)と表現します。
年齢が高くなると排卵誘発剤に対する卵巣の反応性が低下しますので、採卵まで行き着かない患者さんも見られます。
このような方々も含めた妊娠率ですので、妊娠率の表現の中では最も低い結果となります。

③対採卵周期妊娠率
採卵を受けた周期が母数です。上記の例では、対採卵周期妊娠率30%(3妊娠/10採卵周期)となります。
卵巣の反応不良で採卵を中止したケースは除外されています。
採卵を受けた方がその周期に胚移植を必ずしも行うわけではありません。
すべての胚を凍結保存する場合もあります。
その後凍結保存した胚を融解して移植します。
1回の採卵で複数回の凍結融解胚移植を受ける方もいますが、その中のどれか1回でも妊娠すれば、1回の採卵で妊娠したとされます。
一方、採卵しても胚移植できる卵子や胚ができず、胚移植が中止となる方も含まれます。
患者さんにとって採卵が最も負担になる処置ですが、対採卵周期妊娠率が低い場合は患者さんの負担が大きく、対採卵周期妊娠率が高い場合患者さんの負担が少なかったことになります。

④対胚移植周期妊娠率
胚移植を受けた周期が母数です。
上記の例では、対胚移植周期妊娠率33%(3妊娠/9胚移植周期)となります。
採卵や胚移植中止例は含まれないので、妊娠率の表現の中では対治療周期や対採卵周期と比較し高い値になります。
新鮮胚移植周期や凍結胚移植周期妊娠率といった表現をされることもあります。

妊娠でのリスク

①ARTによって妊娠したことで出産に関する障害の増加はありません。
流産率は約20%と自然妊娠の方と変わらず、女性の加齢とともに流産率は上昇します。
子宮外妊娠(卵管妊娠)の危険性は約5%に増加します(自然妊娠では80人に1人に対して、20人に1人の割合)。
2個以上の胚を移植した場合、子宮内外同時妊娠が起こりうる可能性はありますが、非常に稀です。

②ARTを受けた方の共通リスクとして、多胎妊娠が挙げられます。
複数胚の胚移植では二卵性双胎のリスクが、また胚盤胞移植では一卵性のリスクが上昇します。
多胎妊娠は、早産、母体出血、妊娠高血圧症候群、帝王切開、妊娠糖尿病の危険性を増加することになります。

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