卵子・胚の体外培養について

卵子・胚の体外培養について

卵子を採卵し、受精させて胚を子宮に戻すまで体の外で育てる方法が体外培養です。
体外培養は通常採卵後から数日間行われます。限りなく体内に近い環境を体外に準備した施設が培養室です。培養室には体外培養に必要な顕微鏡、クリーンベンチ、インキュベーター、培養皿などの器具や、培養液が準備されています。
卵子や精子は目で見ることができませんので、多くの操作は顕微鏡下で行っていきます。体内と同じ無菌環境で操作を行う必要がありますので、無菌に近い状態を作るクリーンベンチの中に顕微鏡を設置して卵子や胚を取扱います。

胚培養は培養液を満たした培養皿の中で行われます。受精前の卵子、受精後の胚は必要とする栄養素が日々変化していきます。そのために培養液は、卵子や胚の状態に合わせた数種類のものが準備されています。培養液は直接卵子や胚が触れる液であり、受精や胚の発育に影響するため、培養液の質の管理は重要な仕事です。

胚培養は数日間行われるため、卵子や胚は、受精をさせる操作や、顕微鏡での観察以外のときはインキュベーターの中に保存しておきます。インキュベーターの酸素や二酸化炭素の濃度や温度は受精や胚培養に影響を与えるので、培養環境を一定の状態に保つことが重要になります。

 


卵子・胚の質

採卵後、卵子を顕微鏡下で観察し卵子の質を確認します。体外受精では媒精の際には卵子の質は確認できませんが、顕微授精法では卵子のまわりに付着している顆粒膜細胞を取り除く操作を行うので卵子の状態が確認できます。受精できるのは成熟している卵子のみです。未熟な卵子や、変性卵には受精は起こりません。
受精の確認は、媒精あるいは顕微授精後13~18時間の間に観察されます。卵子の核と精子の核が2個並んだ胚が正常受精です。精子が卵子に2個以上入り込んでしまい、核が3個以上見られることがあり、これは異常受精と判断され胚移植の対象外になります。
採卵を行った日を0日とし、2日目には4細胞、3日目には8細胞、4日目には桑実胚、5日目には胚盤胞へと発育していきます。
媒精後1~3日後に胚が2~8つに細胞分裂したものを「初期胚」といいます。初期胚における胚の質はグレード1~5段階(Veeckらの分類)に分かれており、グレードが小さいほどより良好胚といえます。グレード分類は、分割された割球の大きさが均一かと、細胞が断片化したフラグメンテーションの多さで判断します。
割球が均一でフラグメンテーションがない胚をグレード1、割球が均一でフラグメンテーションがわずかにある場合をグレード2、割球が不均一で少量のフラグメンテーションがある場合をグレード3、割球不均が不均一でかなりのフラグメンテーションがある場合をグレード4、割球がほとんど見られずフラグメンテーションで埋め尽くされている場合をグレード5とします。グレード3までは十分妊娠の可能性があるとし、胚移植に用います。
媒精5~6日後の、初期胚よりもさらに発育したものを「胚盤胞」といいます。胚盤胞は発育するにしたがって胞胚腔の広がりが変化するため、胞胚腔の状態から発育程度を6段階に分類します。
そのうち、グレード3以上の胚盤胞はさらに内細胞塊と栄養外胚葉の状態によってA~Cに分類します。内細胞塊は将来胎児になる部分で、大きく鮮明であるほど良いとされています。栄養外胚葉とは将来胎盤になる部分で、大きさが均等で数が多いほど良いとされます。発育スピードと内細胞塊、栄養外胚葉の状態を合わせてグレード分類をし、3AAや4BCのように評価します。よりAAに近いものが質の高い胚盤胞です。

タイムラプスインキュベーター

今まで胚の観察は、培養士が胚をインキュベーターから取り出し、顕微鏡下で行っていました。しかし、この方法は観察のたびに胚を外の環境に暴露することとなり、胚にストレスを与えてしまうことが懸念されてきました。

当院では、タイムラプスインキュベーターの導入により、インキュベーター内に取り付けてあるカメラで、胚を外に出すことなく連続的に撮影をすることが可能となり、ストレスを最小限に抑えることができるようになりました。そこで、より妊娠率の高い胚の選別、胚盤胞到達率や良好胚盤胞率の改善が期待できます。

ラボチームスタッフ

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