精子のトラブル②

精子を作る機能に問題がある「造成機能障害」は男性不妊の原因の大部分を占めていますが、半数以上はなぜ起きるかわかっていません。わかっている原因のうち最も多いのが「精索静脈瘤」です。そのほか陰嚢に精巣がおりてこない「停留精巣」や「精巣炎」などがあります。無精子症を引き起こす染色体異常も知られていて、これは血液検査で調べます。

精索静脈瘤がある

精巣やその上の精索部にある静脈にコブ(静脈瘤)ができる病気です。血流が滞り、陰嚢があたためられて、内部の温度が上昇し、精巣の機能が低下してしまいます。精索静脈瘤のある側の精巣サイズは小さくなり、陰嚢サイズは大きくなります。陰嚢がいつもだらっと垂れ下がっている場合や陰嚢表面が凸凹している場合も精索静脈瘤が疑われます。

→妊娠を希望している場合は手術がすすめられます。

手術には「高位結紮術(こういけっさつじゅつ)」「腹腔鏡下精索静脈瘤手術」「顕微鏡下低位結紮術」があります。残る傷痕の大きさ、再発率などが異なり、どの方法をとるかは手術をする施設によりさまざまです。手術を受けると精液の状態は50~70%改善するとされています。

乏精子症

精液検査で1ml中の精子の数(精子濃度)が1500万未満、射出精子当たりの総精子数(精液量×濃度)が3900万未満の場合です。自然妊娠には最低4000万程度の精子濃度が必要と言われていますが、少ないからといって自然妊娠がまったくできないというわけではありません。

→薬での治療

 酸化ストレスがあると精子濃度が低下する可能性があるため、コエンザイムQ10やビタミンEによる抗酸化療法を行います。

 問題がなければ、タイミング法などのステップアップへ

精子無力症

精液検査で運動率が40%未満の場合です。正常な男性では、運動率は50~60%以上と考えられます。この数字だけで判断するのではなく、通常は精液量(ml)×濃度×運動率で得られる総運動精子数で妊娠能力をはかります。約1/3の人は乏精子症と合併しているとされています。

→薬での治療

 酸化ストレスがあると精子濃度が低下する可能性があるため、コエンザイムQ10やビタミンEによる抗酸化療法を行います。

 問題がなければ、タイミング法などのステップアップへ

無精子症

精液中に全く精子が見当たらない場合です。無精子症は精巣内で精子がつくられていない「非閉塞性無精子症」と精巣内では精子がつくられているが、通り道が塞がって精液中に出でこられない「閉塞性無精子症」に分かれます。

→精巣組織の一部を切り取って、顕微鏡で精子がいるかどうかを調べる「精巣組織検査(精巣生検)」を行います。無精子症の男性の中には染色体異常があることが知られていて、採血で染色体を調べることもあります。

非閉塞性無精子症の場合

ホルモン異常が原因の場合は、ホルモン剤による治療を試みます。わずかでも精子がつくられている可能性があると思われる場合は、精巣内精子採取術(TESE=テセ)や、顕微鏡を使って精細管を観察し、精子や精子になる前の細胞を採取します(Macro-TESE:MD-TESE)。回収できた精子は凍結保存して、顕微授精を行います。

閉塞性無精子症の場合

精巣上体に貯蔵された精子は、精管、精嚢を通って尿道に入り、外尿道口から射精されます。この精路のどこかにトラブルがあるかは「精管精嚢造影検査」で確認します。生まれつき精管がない、鼠径(そけい)ヘルニアの手術や避妊のためのパイプカットが原因であると考えられます。精巣上体炎や精管炎の後遺症であることもあります。

→顕微鏡下精路再建術

ふさがった部分を顕微鏡下で再びつなぎ直します。精管と精管をつなぐ場合と、精管と精巣上体をつなぐ場合があります。手術が成功して精路が通ると、自然妊娠の可能性があります。精液の状態が改善したらタイミング法などのステップアップへ。

精路再建術が向かない閉塞性無精子では、精巣や精巣上体に精子がいるので、それを採取します。回収できた精子は凍結保存して、顕微授精を行います。

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