卵子凍結の副作用とは?副作用による妊娠への影響や注意点も解説

卵子凍結の副作用をイメージさせるお腹を抑える女性の画像

将来の妊娠に備えられる卵子凍結ですが、副作用があることも理解しておくことが大切です。

具体的には卵巣過剰刺激症候群や出血、感染症、麻酔によるアレルギーなどの副作用が生じる可能性があります。

この記事では、卵子凍結の副作用について詳しく解説します。

副作用による妊娠への影響や卵子凍結の注意点、よくある質問などもまとめているためぜひ参考にしてみてください。

卵子凍結の副作用

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卵子凍結の副作用には以下のようなものが挙げられます。

  • 卵巣過剰刺激症候群
  • 出血
  • 感染症
  • 麻酔によるアレルギー

ここでは上記4つの副作用についてそれぞれ解説します。

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卵巣過剰刺激症候群

卵巣過剰刺激症候群は、卵子凍結で排卵を促す際に使われる排卵誘発剤という薬の副作用により生じることのあるものです。

排卵誘発剤によって過剰に刺激されることにより卵巣が膨れ上がり、お腹や胸に水が溜まる症状が生じます。

卵巣過剰刺激症候群の主な症状は以下の通りです。

  • お腹が張る
  • 吐き気がする
  • 急に体重が増える
  • 尿量が少なくなる

重症化すると腎不全(腎臓の働きが30%以下に低下した状態)や血栓症(血管が詰まることで臓器の機能が損なわれる状態)などの合併症を引き起こす恐れもあります。

排卵誘発剤の使用を中止することで症状が改善されることが多いため、上記のような症状が現れたらすぐに医師に連絡しましょう。

また医療機関によっては、卵巣過剰刺激症候群の発症を抑えるために『自然低刺激法』による採卵を行っている場合があります。

卵子凍結の卵巣過剰刺激症候群の発生頻度は10%程度と報告されていますが、発生リスクを低減するように工夫している医療機関もあるため、病院選びの際にチェックしてみてください。

出血

卵子を採取する際、卵巣表面から出血が起こることがあります。

基本的に出血は自然に止まるため特別な処置は必要ありませんが、ごくまれに輸血が必要になるほど多量の出血が生じる場合があります。

感染症

卵巣に針を刺した部分から細菌が入り込み、感染症を発症するリスクがあります。

採卵後に腹痛や性器出血、熱が出るなどの症状が現れたら、すぐに医師に連絡しましょう。

麻酔によるアレルギー

採卵する際に生じる痛みは麻酔を使うことにより軽減できますが、麻酔の副作用によって蕁麻疹やぜんそくなどのアレルギー症状が出る場合があります。

これまで麻酔後にアレルギー反応が出たことのある方は、卵子凍結前に医師に相談が必要です。

麻酔の副作用としては以下のようなものがあります。

  • 吐き気・嘔吐
  • 頭痛
  • のどの痛み、のどの乾き
  • 寒気
  • 発熱

また、まれではあるものの術後せん妄、術後神経麻痺、悪性高熱症などの副作用が起こる可能性があるため、事前に医師から注意点についてしっかり説明を受けるようにしましょう。

卵子凍結の副作用による妊娠への影響

妊娠検査薬の結果を見ている女性の画像

卵子凍結の副作用によって妊娠に影響が出る可能性は低いといえます。

卵子を凍結してから妊娠に使用するまでには期間が開くことになるため、万が一副作用が生じたとしても妊娠に悪影響が出る可能性は低いです。

卵子凍結の注意点

エクスクラメーションマーク(びっくりマーク)の画像

卵子凍結は副作用の他にも、以下のような注意点があります。

  • 必ず妊娠できるわけではない
  • 凍結卵子を融解する際に損壊するリスクがある
  • 卵子凍結・凍結卵子を使用した妊娠には年齢制限がある
  • 保管時のリスクがある

ここでは上記4つの注意点についてそれぞれ解説します。

必ず妊娠できるわけではない

卵子凍結は、妊娠を保証するものではありません

採取した当時の卵子の質を保つことはできますが、すべての卵子が妊娠につながるわけではないのです。

卵子凍結における妊娠率は以下の通りとなっています。

凍結卵子の融解後の生存率90~97%
凍結卵子の融解後の受精率71~79%
凍結卵子の融解後の着床率17~40%
胚移植あたりの妊娠率36~55%
融解卵子1個当たりの妊娠率4.5~12%

また妊娠率は卵子を採取した年齢によっても左右されます。

以下は卵子凍結における卵子1個当たりの妊娠率を調査したデータです。

凍結融解後の未受精卵子35歳までに卵子凍結を行った場合40歳を含む年代で卵子凍結を行った場合
生存率90~97%68.6~89.7%
受精率71~79%71.7~85.8%
妊娠率36~61%3.3~10.8%

上記のデータから、卵子を採取した年齢が高くなるほど妊娠率が低下することがわかります。

40代にはホルモンバランスに不調をきたしたり婦人科疾患を発症しやすくなったりするほか、卵子の染色体異常が増加したり細胞内のエネルギー調節を行うミトコンドリアの機能が低下したりすることがあり、妊娠率が大きく低下します。

妊娠率を高めるためには、なるべく若いうちに卵子を凍結保存しておくことが大切です。

凍結卵子を融解する際に損壊するリスクがある

凍結卵子を融解する際に損壊するリスクがあるため、凍結した卵子全てを妊娠に使用できるわけではない点に注意が必要です。

融解時に卵子が損壊してしまうリスクは5〜20%程度とされています。

融解時の損壊リスクや卵子一つあたりの妊娠率を考慮すると、10個以上は採卵して凍結保存しておくのが望ましいでしょう。

なお、一度の採卵で採れる卵子の数には個人差があり、10個以上採れる人もいれば1~2個程度しか採れない人もいるため、必要に応じて採卵を繰り返します。

卵子凍結・凍結卵子を使用した妊娠には年齢制限がある

卵子凍結や凍結した卵子を使用した妊娠には年齢制限がある点に注意が必要です。

一般社団法人日本生殖医学会倫理委員会が発表している『未受精卵子及び卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン』には以下のような記載があります。

凍結・保存の対象者は成人した女性で、未受精卵子等の採取時の年齢は、40歳以上は推奨できない。また凍結保存した未受精卵子等の使用時の年齢は、45歳以上は推奨できない。

引用元:社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン

上記のガイドラインに沿って卵子凍結は39歳まで、凍結卵子を使用した妊娠は44歳までと制限している医療機関が多いです。

医療機関によっては年齢制限が異なる場合もありますが、高齢になるほど妊娠率や出産率が低下するため、なるべく若い年齢で卵子凍結を行うことが望ましいでしょう。

保管時のリスクがある

卵子凍結には保管時のリスクがあります。

卵子は専用の容器に保管されますが、自然災害や人的ミスにより卵子が正しい状態で保存されなくなってしまう可能性があるのです。

多くの医療機関では保管時に人的ミスのないよう徹底されていますが、自然災害による被害は補償されないケースがほとんどとなっています。

こうしたリスクがあることは理解しておきましょう。

卵子凍結に関するよくある質問

FAQと書かれた木製ブロックの画像

卵子凍結に関するよくある質問をまとめました。

  • 凍結卵子による妊娠の胎児の障害などのリスクは?
  • 凍結保存期間が長いと卵子の質は低下する?
  • 卵子凍結ができないケースはある?
  • 卵子凍結によって妊娠に悪影響が出ることはある?

ここでは上記4つの質問についてそれぞれ回答します。

凍結卵子による妊娠の胎児の障害などのリスクは?

米国生殖医学会が発表したガイドラインの内容によると、凍結卵子を使用した妊娠(顕微授精)で生まれた赤ちゃんと新鮮胚移植(体外受精後に培養した分割期胚や胚盤胞を移植する方法)で生まれた赤ちゃんとを比べて、特別な違いは見られなかったとされています。

染色体異常や先天異常、発育障害のリスクが増大することもなかったため、卵子凍結が原因で障害のリスクが増えることはないと考えてよいでしょう。

凍結保存期間が長いと卵子の質は低下する?

卵子凍結は卵子を変質させずに長期間保存できるのが特徴のため、凍結保存期間が長くなっても卵子の質が低下する心配はほぼありません。

受精卵の凍結期間による妊娠率や出生時の発育に違いがみられるかを調査した論文では、融解後の受精卵の生存率や妊娠成績に差は見られなかったとされています。

また出生時の平均体重や身長、先天異常率、早産率、周産期合併症などにも差なく、身長や体重の推移も異常が見られませんでした。

10年以上凍結保存した卵子を使用して妊娠・出産したケースもあるため、保存期間による影響はほとんどないといってよいでしょう。

卵子凍結ができないケースはある?

検査の際に以下のような状態が発覚した場合は、卵子凍結ができない可能性があります。

  • 卵巣機能が低い
  • 卵子の数が少ない
  • ホルモン異常がある
  • 婦人科系疾患がある

また感染症検査により感染症にかかっていることが分かった場合は、そちらを完治させてからでないと卵子凍結が行えません。

卵子凍結が行えるかは検査の結果次第となるため、まずは医師に相談してみてください。

卵子凍結によって妊娠に悪影響が出ることはある?

卵子凍結による特別な悪影響は現時点では報告されていませんが、卵子を採取する年齢や妊娠を希望する年齢によっては高齢出産となる可能性があります。

一般的に35歳以上での出産は高齢出産となり、以下のようなリスクが高くなります。

  • 妊娠高血圧腎症
  • 妊娠糖尿病
  • 子宮内胎児発育遅延
  • 早産
  • 流産

上記のようなリスクを回避するためには、なるべく若い年齢で卵子凍結することが大切です。

まとめ

卵子凍結の副作用として、卵巣過剰刺激症候群や感染症の発症、出血、麻酔によるアレルギーなどが挙げられます。

これらの副作用のリスクはつきものですが、上記のリスクを低減するために工夫している医療機関も多いです。

また卵子凍結は副作用だけでなく、融解時の損壊リスクや保管時の災害によるリスクなども理解しておく必要があります。

三軒茶屋ウィメンズクリニックでは、日本生殖医学会のガイドラインに基づいた未受精卵子の凍結・保管に対応しています。

卵子凍結に関する不安や悩みがある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。

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