婦人科検診では何をする?検査内容や発見できる疾患、費用相場などを紹介

婦人科検診は、女性の身体に発生するさまざまな疾患を早期発見・治療するために行われます。
婦人科疾患は妊娠や出産、月経に大きな影響を及ぼすだけではなく、命に関わる可能性もあるため、通常の健康診断とは別に定期検診を受けましょう。
この記事では、婦人科検診の内容や費用相場などを紹介します。
婦人科検診について理解を深め、受診の必要性を知るための参考にしてください。
婦人科検診の目的

婦人科検診は女性専用の健康診断のようなもので、月経に影響を及ぼす子宮・卵巣の疾患や乳がんなどの早期発見・治療を目的として行われます。
婦人科系の疾患には初期の自覚症状がないものや、不妊の原因になるものがあるため、定期的に検査を受けて早期発見に努めることが大切です。
子宮や卵巣のがんやその他の疾患の発見を目的としている場合が多いですが、この場合は基本的に自費診療で、オプションとして乳がん検診や性病検査を追加できるケースもあります。
女性は年齢や月経の状態、妊娠・出産によってこれらの疾患のリスクが大きく変化する可能性があるため、異常を感じない場合でも検診を受けることが望ましいです。
婦人科検診には特に年齢制限がありませんが、子宮頸がんの罹患率が上昇する20代からの定期的な受診が推奨されます。
婦人科検診の検査項目

婦人科検診の検査項目は受診する婦人科によって異なりますが、主に以下の内容があります。
血液検査・おりもの検査
血液検査ではホルモンや肝臓・腎臓の状態などを調べ、おりもの検査では膣や外陰部に異常がないか、おりものの状態が正常かなどをチェックします。
婦人科の血液検査では、ホルモンの分泌や肝臓・腎臓が正常な状態かの判定のほかに、性感染症や血栓症リスクの有無も確認できます。
また採取した血液からは腫瘍マーカーの判定ができるため、腫瘍の有無や検査内容の判断も可能です。
おりもの検査では、細菌が原因で引き起こされる膣炎や外陰炎の判定以外に、クラミジア・淋菌・カンジダ・トリコモナスなどの性感染症の有無も確認できます。
子宮頸がん検査
子宮頸がんの検査には、子宮頸部細胞診やHPV検査などが含まれます。
子宮頸部細胞診は、子宮の入り口を検査用のブラシやヘラなどで優しくこすって細胞を採取し、がんを引き起こす異形成がないか、既にがんがあるかどうかなどを調べます。
痛みや違和感が少なく、約5分という短い時間で検査が可能です。
HPV(ヒトパピローマウイルス)は子宮頸がんの原因となるウイルスで、子宮頸部が感染しても基本的には免疫力によって排除されますが、まれに消失せずに感染が持続するケースがあり、その結果、子宮頸がんに発展します。
性行為の経験がある女性の多くに感染のリスクがあるとされていますが、感染からがん化するまでに時間がかかることから2年に1回のペースでの検査が推奨されます。
子宮体がん検査
子宮体がんの検査方法には、子宮体部細胞診や経腟超音波検査などがあります。
子宮体部細胞診では、子宮内膜に専用の器具を挿入して細胞を採取し、がんの有無を調べます。
子宮頸部細胞診と比較して痛みを伴いやすく、検査後数日のあいだは茶色いおりものや少量の出血がみられるケースがありますが、特に心配はありません。
経腟超音波検査は、子宮内部に超音波を発する棒状の器具を挿入し、子宮や子宮内膜、卵巣などの状態を調べる検査です。
子宮や卵巣に発生する子宮体がん以外の疾患や、子宮内膜症や子宮筋腫などの月経に影響を及ぼす疾患の発見も可能です。
乳がん検査
乳がん検診では、触診・マンモグラフィー・乳腺超音波検査などが行われますが、検診における乳がん検査の有無は受診する婦人科によって異なります。
触診では、医師が患者さんの乳房に直接触れることでしこりの有無やリンパ節の腫れ、皮膚の状態や乳頭からの分泌物などを調べます。
触診は乳がんの発見を目的とした最も基本的な検査で、乳腺症や繊維腺腫の発見も可能です。
マンモグラフィーは乳房を撮影するための専用のX線装置を使用する方法で、しこりや石灰化などの病変を画像で確認できます。
撮影時間は数秒ですが、乳房を板に挟んで撮影するため、乳腺が張ったり硬くなったりしている場合は痛みを感じやすいです。
乳腺超音波検査は、胸部に超音波を当てた際の跳ね返りを可視化して異常がないか調べる方法です。
乳腺の量が多い傾向にある若い女性や授乳経験がない女性などでしこりを見つけるのに有効です。
婦人科検診で発見できる疾患

婦人科検診で発見できる主な疾患には以下のものがあります。
子宮頸がん
子宮頸がんはHPV感染が原因で引き起こされる子宮頸部のがんで、30歳前後の女性にみられる悪性腫瘍のなかで最も多いとされています。
ウイルスに感染してからがんが発生するまでに5〜10年ほどかかるため、2年という長い頻度での定期検診が推奨されます。
しかし悪化すると進行が速くなり、5年生存率が約15%まで低下するケースもあるため注意が必要です。
HPVは性行為のある女性であれば誰しもが感染するリスクがあるウイルスで、パートナーが変わることでうつる可能性もあります。
異形成や早期の時点で発見できれば完治を目指せるため、積極的に検診を受けましょう。
子宮体がん
子宮体がんは子宮内膜から発生するがんで、妊娠の経験がない・少ない女性や、肥満・高血圧・糖尿病がある女性の発生リスクが高いとされています。
子宮内膜にできるがんであるため、毎月月経で子宮内膜が正常に排出されていれば発症リスクは低いとされていますが、月経不順や排卵障害などの異常がある場合は閉経していなくても発症します。
初期のうちから不正出血がみられるのが大きな特徴で、更年期による月経不順では不正出血を月経と勘違いすることで発見が遅れるケースが多いです。
そのほか、下腹部の痛みやおりものの異変などの症状もみられるため、月経不順で不正出血と経血の区別が難しい人や閉経後にも出血がある人は、早めに婦人科を受診しましょう。
卵巣がん
卵巣がんは子宮内膜症やチョコレート嚢胞などの疾患のほか、肥満や食事などの生活習慣がリスク要因となって発症します。
自覚症状がないケースがほとんどで、がんの進行が早いため婦人科検診での早期発見が重要です。
また卵巣がんや乳がんになった経験がある家族がいる場合、本人も卵巣がんを発症しやすいとされています。
卵巣には良性・悪性に関わらず腫瘍ができやすく、卵巣がんは卵巣にできる嚢腫の約10%を占めます。
経腟超音波検査で卵巣嚢腫や腫瘍と同時に発見が可能です。
子宮筋腫
子宮筋腫は子宮の筋肉内にできるこぶ状の腫瘍で、基本的には良性の疾患ですが、急激に増大したり出血が続いたりするケースでは子宮肉腫と呼ばれる悪性腫瘍が潜んでいる可能性があるため経過観察が大切です。
筋腫が大きくなるまで自覚症状が現れない場合がありますが、筋腫が子宮の内側に形成されると、小さくても過多月経や貧血を引き起こすおそれがあります。
筋腫が発生した部位や症状、状態を考慮して治療方針が定められるため、検診によって小さいうちに発見できるのが望ましいです。
子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮内膜と類似した組織が本来あるべき子宮以外の場所で増殖する疾患で、卵巣・卵管・腹膜などの組織に発生することが多いとされています。
原因は明確になっておらず、主な症状としては月経困難症や月経時以外の腹痛・排便痛があり、年齢とともに月経痛が強くなる可能性が高いです。
卵巣で発生すると卵巣嚢腫の原因となり、子宮筋層で発生すると子宮腺筋症の原因となるほか、腹膜で発生した場合は癒着を引き起こすケースがあります。
内診での診断は非常に難しく、卵巣嚢腫や子宮腺筋症になった場合は経腟超音波検査が必要です。
卵巣嚢腫
卵巣嚢腫は卵巣内に液体が溜まった状態で、液体の特徴や種類によって漿液性嚢腫・粘液性嚢腫・皮様嚢腫・チョコレート嚢胞などに分類されます。
卵巣嚢腫のなかで最も多いのは漿液性嚢腫で、皮様嚢腫では脂肪のほか歯や髪の毛などが溜まるとされており、20〜30代の女性に多く見られます。
根元がねじれる茎捻転が原因で激痛を引き起こし、緊急手術が必要になる場合もありますが、多くの卵巣嚢腫は無症状で、婦人科検診やその他の件で受診した際にたまたま発見されるケースが多いです。
婦人科検診の費用相場

婦人科検診の費用相場は以下の通りです。
子宮頸がん検査 | 4,000〜10,000円 |
子宮体がん検査 | 13,000〜15,000円 |
乳がん検査(マンモグラフィー) | 4,000〜8,000円 |
乳がん検査(乳腺超音波) | 3,000〜6,000円 |
経腟超音波検査 | 3,000~5,000円 |
HPV遺伝子検査 | 3,000〜5,000円 |
婦人科検診は、症状があって検査が必要と医師が判断した場合は保険が適用されますが、無症状で定期検診を目的としている場合は基本的に全額自己負担です。
自費診療の婦人科検診では料金が高額になりますが、目的や予算に合わせて検査を選択できる利点があります。
自治体によっては、乳がん検診と子宮頸がん検診を対策型検診の対象として費用の補助を行っている場合があるため、受ける前に確認することをおすすめします。
まとめ
婦人科検診の検査項目や発見できる疾患、費用相場を紹介しました。
婦人科疾患のなかには、自覚症状がなく気付いた時には進行しているものもあります。
検診について今まで気にしたことがない場合も、性交渉の経験がある女性は年齢に関わらず積極的に受けましょう。
三軒茶屋ウィメンズクリニックでは、不妊治療をはじめ子宮がん検診や卵巣がん検診、ブライダルチェックなどを行っております。
患者様の気持ちに寄り添い、誠実な診療を行える体制を整えているため、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療が可能です。
かかりつけの産婦人科医院として、ぜひご利用ください。