月経と生理の違いは?仕組みを理解して自分の生理と上手に付き合おう
女性なら誰しもが経験する生理ですが、保健の授業で初めて知ったときは、月経という言葉で学んだ人も多いでしょう。
では、月経と生理という言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、月経と生理には違いがあるのか、生理のときからだの中ではどのような現象が起きているのかについて詳しく解説します。
生理について幅広く知りたい人や、これから初潮を迎えるお子さんと一緒に理解を深めたいお母さんはぜひ参考にしてください。
月経と生理の違いは?
月経と生理は言葉が異なりますが、月経は生理を医学用語で正式にあらわした言葉で、同じ意味をもちます。
昭和時代に労働基準法によって導入された生理休暇という制度が、月経が生理といわれるようになったきっかけです。
義務教育では月経で教わる場合もありますが、生理のほうがなじみ深い印象があります。
また人によっては、女の子の日やアレの日などの表現をする人もいるようです。
月経と生理はどちらでも意味が通じる場合が多いため、どちらの表現を使っても問題ありません。
生理が起こる仕組み
生理とは、胎児を迎えるために作られたベッドが必要なくなった結果、体外に排出される現象のことで、性器からの出血を伴います。
生理が終わってから始まるまでのメカニズムは以下のようになっています。
卵胞期
卵胞期では、脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモンの血中濃度上昇をきっかけに、卵巣内にある原始卵胞が発育します。
卵胞期が後半にさしかかると、卵胞刺激ホルモンの血中濃度が低下していき、原始卵胞は成熟卵胞へと成長します。
原始卵胞は思春期には1万6千個ほどあるとされていますが、1回の生理で成熟卵胞になるのは通常1つの原始卵胞です。
こうして成長した成熟卵胞からはエストロゲンが分泌されるようになり、子宮内膜の増殖に関与します。
排卵期
排卵期は、成熟卵胞から分泌されるエストロゲンがある程度まで上昇し、脳下垂体から卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの血中濃度が急激に増加することで始まります。
その後成熟卵胞から卵子が排出されますが、2つのホルモンが急激に増加してからおよそ16〜32時間後が排卵のタイミングの目安です。
この時期ではエストロゲンの血中濃度が低く、プロゲステロンの血中濃度が徐々に増加し始めます。
黄体期
黄体期では、排卵期で急激に上昇した卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンの血中濃度が徐々に低下していき、排卵を終えた卵胞は黄体という組織に変わります。
排卵期で低下していたエストロゲンの血中濃度は、黄体期では高い状態で維持され、エストロゲンとプロゲステロンが子宮内膜を厚くしていくことで、妊娠への準備が整えられます。
黄体期は、次の生理が始まる前の最終時期です。
受精しなかった場合、黄体の退化によってプロゲステロンの分泌量が減少し、エストロゲンの血中濃度も低下します。
生理期
妊娠に向けて厚くなっていた子宮内膜が剥がれ落ち、経血として排出されるのがいわゆる生理と呼ばれる現象です。
生理期では、プロスタグランジンという物質が子宮の収縮を促すことで生理痛をともなう場合があります。
体調が優れないときは無理をせず、できるだけ安静にして過ごしましょう。
生理期で起こる出血が終わるとほぼ同時に再び卵胞期が始まり、次の生理周期が開始します。
生理周期は何によって決まる?
生理周期とは、生理開始日から次回の生理開始日までのことを指し、卵胞期から生理期までのサイクルを経て次の生理が来るまでの期間で決まります。
生理周期には多少個人差がありますが、正常な生理周期は25〜38日のあいだとされていて、排卵から生理が始まるまでの期間と、生理開始から排卵までの期間を足すことで求められます。
排卵から生理が始まるまでの期間は一般的には14日とされているため、例えば生理開始から排卵までの期間が14日の場合は生理周期は28日、19日の場合は生理周期は33日です。
また、毎月全く同じ生理周期である必要はなく、前後6日ほどのズレであれば異常ありません。
ただし、この方法で算出される生理周期はだいたいの日数であるため、具体的な生理周期や排卵日を知りたい場合は、婦人科でエコー検査を受けることをおすすめします。
生理不順を引き起こす要因
生理の状態を把握するのに重要な目安となる生理周期ですが、以下のようなきっかけで遅れたり早まったりする可能性があります。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは、生理周期に大きく影響を及ぼす要因のひとつです。
生理には多くのホルモンが関わっていて、それぞれが複雑に作用することで成り立っています。
生理時に分泌されるホルモンは、環境変化や生活習慣などが原因でストレスを受けることで乱れやすいです。
生理周期は、正常とされる範囲から外れると生理不順が疑われますが、ホルモンバランスが乱れると生理不順になりやすく、健康に悪影響がでるおそれがあります。
なんらかの疾患
生理周期が乱れる原因として、以下の疾患が例として挙げられます。
- 子宮内膜症
- 子宮筋腫
- 子宮腫瘍
- 多嚢胞性卵巣症候群
- 不妊症
- 早発卵巣不全
- バセドウ病
- 自律神経失調症
- 下垂体腺腫
生理不順を放置すると、子宮や卵巣の病気のほか、ホルモンの分泌を司る器官の異常を放置する事態につながるおそれがあります。
多少の生理不順であれば問題ないケースもありますが、自己判断はむずかしいため、生理周期はしっかり管理したうえで不規則になったら念のため婦人科の受診をおすすめします。
極端なダイエット
栄養不足やストレス蓄積の原因となるような極端なダイエットは、生理周期を不安定にする可能性があります。
また過度なダイエットは不妊の原因になったり、骨粗鬆症のリスクを高めたりするなど、健康にさまざまな悪影響を及ぼします。
ダイエット自体は悪いことではないですが、適度な運動やバランスの取れた食事など、健康的な方法で行うようにしましょう。
服用薬の影響
胃薬や抗うつ剤など、副作用でホルモンの分泌に影響を及ぼす可能性のある薬を服用している場合、生理不順がおこる可能性があります。
もし現状でこれらの薬を服用していて生理周期が正常な場合でも、このままでホルモンバランスに影響はないのか、念のためかかりつけの婦人科に相談しておくことをおすすめします。
また、これらの薬を服用していないのに生理が遅れたりとまったりした場合は、一度常用している薬がないか確認し、ある場合は同様に一度婦人科で相談しましょう。
生理中に起こる体調不良の原因
生理中は身体に以下のような不具合が起こる場合があり、その症状の大きさにも個人差があります。
生理中の体調不良によって日常生活に支障をきたす場合は、我慢せずに婦人科に相談することをおすすめします。
腹痛・腰痛
生理の時に腹痛があるのは子宮が強く収縮することが原因で、これによって子宮まわりの血行が悪くなると、腰痛をともなうケースもあります。
また排卵の時に感じる痛みは、卵子が卵巣から排出される際に卵巣の壁を破壊することで生じるため、毎月左右の卵巣から交互に痛みを感じるケースもあります。
腹痛や腰痛がしんどい場合は、身体やお腹周りを温めて血流をよくすると痛みの緩和に効果的です。
生理痛がひどく、我慢できないほどの痛みや鎮痛剤なしでは生活できないほどの痛みを感じる場合は、月経困難症である可能性があるため、早めに婦人科を受診しましょう。
昼間まで続く眠気
排卵期にはいり基礎体温が上昇することで、夜に眠気を感じずに昼間眠くなるなど、睡眠のリズムに影響を及ぼすケースがあります。
通常では体温が下がることで感じるはずの眠気ですが、高温期になり体温の高低差が少なくなると眠くなるタイミングが不安定になり、生活リズムにも影響します。
また、排卵後に多量に分泌されたプロゲステロンが分解されて生じるアロプレグナノロンには眠気を誘発する効果があり、これも生理時に眠くなる原因のひとつです。
日常生活に支障をきたす場合は、ピルを処方してもらい対処することが可能なため、婦人科への相談をおすすめします。
メンタルが不安定になる
生理の時は、ホルモンの影響や体調が原因でイライラしたり、ネガティブになったりすることがあります。
生理前のメンタル面の不調は多くの女性が経験しますが、症状が激しい人は月経前不快気分障害である可能性があり、深刻な精神疾患につながるおそれがあります。
生理の際にメンタル面が不安定になるのを感じやすい人は、好きなことをしてリラックスしたり、心が落ち着く香りや音楽を楽しみながらくつろいだりして自分の体をいたわってあげましょう。
めまい・立ちくらみ
生理によって毎月身体から血液が失われると、貧血を引き起こしてめまいや立ちくらみを引き起こす可能性があります。
とくに過多月経や頻発月経、過長月経のような生理不順がみられる女性の場合は、鉄欠乏性貧血になる可能性が高いため注意が必要です。
また生理中のめまいやふらつきは、脳貧血による起立性調節障害が原因であるケースが多いです。
立っていられないほどのめまいやふらつきを起こした場合は、足を少し高く上げて、リラックスした格好で横になり安静にしてください。
身体は冷やすのではなく温かくしておくことがポイントで、水分補給は少量ずつ常温の水分をとるようにしましょう。
肌トラブル
生理にともなうホルモンバランスの変動によって肌の状態が不安定になり、ニキビが増えたり肌のかさつきを引き起こしたりする場合があります。
とくに生理前1週間ほどは黄体ホルモンの分泌が活発になるため、肌の状態が悪くなりやすいです。
また外部からの刺激によってバリア機能が低下し、肌のうるおいが失われやすいため、エアコンの設定や季節の変わり目には注意が必要です。
生理時に肌トラブルが起きやすい人は、毎日朝晩の1〜2回優しく洗顔し、肌を清潔に保つようにしましょう。
便秘・軟便(下痢)
生理の前にはプロゲステロンの働きで便秘になりやすく、生理中はプロスタグランジンの働きで下痢や軟便になりやすいです。
排卵期に分泌量が増え始めるプロゲステロンには、水分の再吸収を促進して便を硬くする効果があるため、便秘を引き起こす可能性があります。
また生理が始まりプロスタグランジンという物質が増加すると、腸の働きが活発になることで、下痢や軟便を引き起こします。
生理時に起こる便秘や下痢に悩まされる場合は、身体を温めたり食べるものに気をつかったりと、できるかぎりの対策をしましょう。
どうしても改善されない場合は、薬を利用する手段もあります。
一度婦人科で相談して、自分に合った対処法を探すのもおすすめです。
まとめ
月経と生理は違う言葉ですがどちらも同じ意味をもち、どちらの言葉を用いたほうがいいといった決まりはありません。
しかし、あまり人前で生理や月経という言葉を使うのは直接的すぎるため、女の子の日やアレの日など、間接的に伝わるような表現をするとよいでしょう。
三軒茶屋ウィメンズクリニックでは、婦人科疾患全般の治療を取り扱っているほか、女性の生理の悩みに関する相談にも親身に対応します。
幅広い年齢の女性により良い治療法をオーダーメイドで提供するため、かかりつけの産婦人科医院としてぜひご利用ください。
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