生理中に起こる貧血の原因は?症状を見逃さないチェックポイントと治療法

生理中に貧血を経験する女性は少なくありません。経血による鉄分の喪失が主な原因ですが、場合によっては婦人科疾患や生活習慣が影響していることもあります。
貧血の症状を放置すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、健康リスクが高まる可能性もあります。
この記事では、生理中の貧血の原因や症状、見逃してはいけないサイン、そして効果的な治療法について詳しく解説します。
生理による貧血の仕組み

貧血とは、血液中のヘモグロビン値が低下し、体内に十分な酸素を供給できなくなる状態を指します。
生理と貧血には深い関係があり、生理中やその後に貧血の症状を経験している女性は少なくありません。
鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンの材料であり、全身に酸素を運ぶ重要な役割を果たしています。
生理中には経血とともに鉄分が失われるため、女性は特に『鉄欠乏性貧血』になりやすいといわれています。
生理中の貧血症状

生理による経血の排出で体内の鉄分が不足し、全身が酸素不足に陥ることでさまざまな症状が現れます。以下は、生理中に見られる主な貧血症状です。
- めまい・立ちくらみ
- 動悸・息切れ
- 疲労感・倦怠感
- 頭痛・耳鳴り
- 顔色の悪化
- 爪が薄く割れやすくなる
生理中には『脳貧血』も起こりやすく、これは急激な体位変化や自律神経の乱れによる一時的な脳の酸欠状態を指します。
鉄欠乏性貧血とは異なり、足を高くして横になることで改善しやすいです。
慢性的な貧血は自覚症状が少ない場合もあり、放置すると心臓や脳への負担が大きくなる可能性があります。
特に生理中にこれらの症状を頻繁に感じる場合は、早めに医療機関で検査を受けることをおすすめします。
生理中の貧血は病気の兆候?

生理中の貧血は、単なる鉄分不足によるものだけでなく、場合によっては病気の兆候である可能性もあります。
ここでは、生理中の貧血が病気と関連するケースや注意すべきポイントを解説します。
過多月経との関連
通常の生理よりも経血量が多くなる状態を『過多月経』といいます。この状態では、体内の鉄分が過剰に失われるため注意が必要です。
経血による鉄分の喪失が原因で、全身が酸素不足に陥り、めまいや動悸、息切れなどの症状を引き起こします。
一般的に、1周期で経血量が140ml以上になる場合、過多月経と診断されます。この状態が続くと、鉄分補給が追いつかず、鉄欠乏性貧血を引き起こすリスクが高まります。
病気が隠れている可能性
以下のような婦人科疾患や他の健康問題が、生理中の貧血を引き起こしている場合があります。
- 子宮筋腫:子宮内腔にできた筋腫(粘膜下筋腫)が過多月経を引き起こし、慢性的な貧血につながる
- 子宮腺筋症:子宮筋層に内膜様組織が入り込み、過多月経や痛みを伴うことがある
- 子宮内膜増殖症:子宮内膜が異常に厚くなることで出血量が増え、貧血を招く
- 子宮頸がん・子宮体がん:悪性腫瘍による慢性的な出血や月経異常が貧血の原因となる
疾患は放置すると症状が悪化する可能性があります。特に経血量が極端に多い、生理期間が長い場合には早めに婦人科を受診することをおすすめします。
受診の目安
以下のような症状がある場合には医療機関を受診しましょう。
- 経血量が多すぎて日常生活に支障をきたす
- 生理以外でも疲労感やめまいなどの症状が続く
- 貧血症状(動悸・息切れ・立ちくらみ)が強い
- 生理期間が10日以上続く
婦人科で月経異常や婦人科疾患を調べてもらうほか、必要に応じて消化器科や内科で他の原因も確認することが重要です。
生理中の貧血を防ぐために摂りたい栄養素

貧血を予防するには、鉄分を中心とした栄養素をバランスよく摂取することが重要です。ここでは、貧血予防に効果的な食材や食事の工夫を紹介します。
鉄分:ヘモグロビンを作るために必要不可欠な栄養素
鉄は赤血球のヘモグロビンを作るために必要不可欠な栄養素です。特に生理中は経血で多くの鉄分が失われるため、鉄分補給が重要です。
以下の食品を積極的に取り入れましょう。
- 赤身肉(牛・豚)
- レバー
- 魚介類(あさり、かき、まぐろ)
- ほうれん草
- 小松菜
- 大豆製品
- 海藻類
また、鉄分補給にはサプリメントも有効ですが、過剰摂取には注意が必要です。
ビタミンC:鉄分吸収を助ける
ビタミンCは非ヘム鉄の吸収を助ける働きがあるため、鉄分を含む食品と一緒に摂取すると効果的です。以下の食品がおすすめです。
- 柑橘類(オレンジ、レモン)
- キウイ
- いちご
- 野菜(ブロッコリー、ピーマン、大根葉)
お酢や梅干しといった酸味のある食品は胃酸の分泌を促し、鉄分吸収を助けます。料理の際にレモン汁を加えると、手軽に取り入れられるでしょう。
葉酸:赤血球の生成を助ける
葉酸は赤血球の生成を助ける栄養素で、不足すると貧血につながります。以下の食品を意識して摂取しましょう。
- 緑黄色野菜(ブロッコリー、アスパラガス)
- 果物(アボカド、オレンジ)
- 大豆製品
- 卵
葉酸は特に女性にとって重要な栄養素であり、日常的な摂取が推奨されます。
ビタミンB12:赤血球の形成に必要
ビタミンB12は赤血球の形成に必要で、不足すると貧血や疲労感を引き起こします。このビタミンは動物性食品に多く含まれるため、以下の食品がおすすめです。
- 魚介類(鮭、あさり)
- 卵
- 乳製品(ヨーグルト、チーズ)
魚やレバーなどには豊富に含まれている一方で、野菜などの植物由来の食品にはほとんど含まれていないのが特徴です。
タンパク質:赤血球やヘモグロビンの材料
タンパク質は赤血球やヘモグロビンの材料となるため重要です。以下の食品から良質なタンパク質を摂取しましょう。
- 肉類
- 魚介類
- 大豆製品(豆腐、納豆)
- 卵
- 乳製品
タンパク質不足は全身のエネルギー低下にもつながるため注意が必要です。
避けたい食品・飲み物

鉄分の吸収を妨げる食品や飲み物には注意が必要です。緑茶や紅茶、コーヒーに含まれるタンニンは非ヘム鉄と結合して吸収を阻害します。
また、加工食品に含まれるリン酸塩や玄米なども同様に吸収を妨げる可能性があります。鉄分の吸収を阻害する飲み物は、食事中やその直後の摂取を避けるよう心掛けましょう。
生理中は特に鉄分不足になりやすい時期です。
日々の食事で意識的に鉄分とその吸収を助ける栄養素を取り入れ、不足しがちな栄養素を補うことで、生理中の貧血症状を予防しましょう。
生理中に貧血の症状が出た時の応急処置方法

生理中に貧血の症状が現れると、めまいや立ちくらみ、吐き気などが起こることがあります。症状を緩和するためには、即座に適切な応急処置を行うことが重要です。
ここでは、具体的な対処法を紹介します。
安静にする
めまいや立ちくらみを感じた場合は、転倒を防ぐためにまず近くの椅子に座るか床やベッドに横になりましょう。
横になった場合は、足を心臓より高い位置に置く(約15〜30cm)ことで、脳への血流を促進し酸欠状態を改善します。
外出先で貧血症状が出た場合は、安全な場所で安静にし、必要であれば周囲の人に助けを求めましょう。無理して歩いたり動いたりせず、症状が落ち着くまで待つことが大切です。
衣服を緩める
貧血の症状が出た際には、体を締め付ける衣服を緩めましょう。ズボンのベルトやきつい服装は、血行や呼吸を妨げる可能性があります。
特に、ウエストや胸周りを締め付ける服装は、体内の循環機能に負担をかけることがあり、貧血症状を悪化させることもあります。
ベルトやボタンを外し、体を楽な状態に整えましょう。また、靴や靴下がきつい場合も足元の血行を妨げる可能性があるため、緩めておくと良いです。
水分と糖分を補給する
貧血の症状が出た際には、水分と糖分を補給することが効果的です。吐き気がない場合は水やスポーツドリンクを少しずつ飲み、水分補給を行いましょう。
体内の水分量が不足すると血液の循環が悪化し、貧血症状がさらに強まる可能性があります。
スポーツドリンクは電解質も含まれているため、体内のバランスを整えるのに役立ちます。
また、糖分の補給も重要です。飴やジュースなど手軽に摂取できるものを利用すると、低血糖による症状(倦怠感やめまい)を緩和する効果が期待できます。
特に、貧血と低血糖が同時に起きている場合には、糖分補給が症状改善に役立ちます。
ただし、一度に大量に摂取すると胃腸に負担をかける可能性があるため、少量ずつゆっくり摂ることがポイントです。
生理中の貧血に関するQ&A

生理中の貧血に関するよくある疑問を解説し、隠れ貧血や低用量ピルの効果について詳しくお伝えします。日常生活で役立つ情報を参考に、貧血対策に役立ててください。
Q1:隠れ貧血とは何ですか?
生理による隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)はヘモグロビン値が正常でも体内の貯蔵鉄(フェリチン)が不足している状態です。
特に生理中や過多月経による鉄分の喪失が原因となりやすいです。
疲れやすさや倦怠感、立ちくらみなどの症状が現れることがありますが、一般的な血液検査ではヘモグロビン値が正常範囲にあるため見逃されることが多いです。
隠れ貧血を疑う場合は、フェリチン値を測定することで体内の鉄分状態を正確に把握できます。
生理が原因で慢性的な疲労感を感じる場合は、早めに医療機関で相談することをおすすめします。
Q2:生理中の貧血に低用量ピルは効果的ですか?
低用量ピルは、生理中の貧血改善に効果的な治療法の一つです。
低用量ピルにはエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが含まれており、これらが子宮内膜の増殖を抑制することで月経量を減少させます。
その結果、過多月経による鉄分喪失が軽減され、鉄欠乏性貧血の予防や改善につながります。
ただし、低用量ピルには血栓症リスクがあるため、服用を始める際には医師との相談が必要です。
また、喫煙者や特定の疾患を持つ方には処方できない場合があります。
まとめ
生理中の貧血は、経血による鉄分の喪失が主な原因ですが、子宮筋腫や子宮内膜症などの疾患が隠れていることもあります。
貧血症状を放置すると健康リスクが高まるため、早めの対処が重要です。鉄分を意識した食事や生活習慣の改善、低用量ピルなど適切な治療法で症状緩和を目指しましょう。
生理中の貧血や月経トラブルでお悩みなら、三軒茶屋ウィメンズクリニックにご相談ください。
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気になる症状があればお気軽にご相談ください。