PGT-A検査

 体外受精において、胚盤胞の一部の細胞を採取し、必要な遺伝子検査を行う技術を着床前診断(PGT)と呼び、その中でも受精卵の染色体の数的異常の有無を診断する技術をPGT-Aと呼びます。人間の正常な染色体数は22対の常染色体と、1対の性染色体という46本で構成されています。この染色体数が多かったり、少なかったりすることがあり、これを染色体の異数性といいます。この異数性が起こると、受精卵の着床率は大幅に下がる傾向にあります。


たとえ染色体の異数性があったとしても、着床することはあります。しかし、妊娠初期で流産してしまう場合が少なくありません。妊娠初期に起こる流産の50%以上は、染色体異常が原因とされています。

PGT-Aは着床前に受精卵の染色体数の異常を調べ、着床率を高め、流産率を低下させようとする検査です。日本での実施件数はまだ少ないのですが、日本産婦人科学会のパイロット研究の結果によると、PGT-A検査後の妊娠率は約66.7%となり、検査をしない場合と比べて、2倍以上の成功率になりました。

PGT-Aの利点

  • 妊娠の可能性が高まる。
  • 流産率が低下する。
  • 妊娠までにかかる周期数が少なくすむ。
  • より確実な1個の胚移植ができ、双胎妊娠に伴うリスクを回避できる。

PGT-Aの具体的な方法としては、受精卵を胚盤胞まで育て、胎盤になる部分から5個の細胞を採取し、検体は検査機関に送られ、細胞からDNAを抽出し、染色体の数量を解析します。その間、患者様の受精卵は凍結保存されます。

結果は、受精卵の染色体の数量に基づいて、正倍数体、異数体、モザイクの3つのうちのいずれかに分類されます。すべての受精卵で異数性が確認されるということも残念ながら起こります。つまり正倍数体の受精卵がひとつもない状態です。このような場合にはモザイク胚を移植するという選択肢もあります。モザイクとは正倍数体細胞と異数体細胞が混在している現象です。モザイク胚の方が正倍数体胚よりも着床率が低く、流産率が高いことがわかっていますが、健常な出生に至る可能性もあります。しかし、モザイク胚の扱いについては判断が難しく、現在でも議論が続けられています。

PGT-A検査は有用な検査ではありますが、注意すべき点もあります。PGT-Aが実施されるのは受精卵全体ではなく、採取された少数の細胞です。そこで、採取された細胞が受精卵全体の遺伝情報をと一致しない可能性があるため、確定的な診断ではないということへの理解が必要です。また、検査で正倍数体と判断されたからといって必ずしも妊娠するわけではありません。そして、検査の際に胚盤胞にダメージを与える可能性もあります。

PGT-A検査を受ける際には、納得のいくまで医師や遺伝カウンセラーとよくご相談のうえで慎重にご検討されることをお勧めします。

 ラボチームスタッフ

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