ピルの効果は具体的にどういうもの?原理から注意点までを解説
ピルという薬の名前は知っていても、その効果について聞かれると『避妊するもの』と漠然と認識している人も多いのではないでしょうか。
ピルは避妊だけではなく、他にも女性特有の悩みに対処することが可能な薬です。
『生理痛はあって当たり前』『自分が生理不順なのは体質でしかたない』などの悩みは、もしかしたらピルの服用により改善できるかもしれません。
この記事では、ピルがなぜ女性の悩みに効果があるのかに加え、注意点などについて解説していきます。
ピルのしくみ
ピルにはいくつかの種類があり、目的や体質によって使い分けられます。
どの種類も原理は同じで女性ホルモンが含まれる量で分類され、医師の診断を受けて処方される薬です。
原理
ピルとは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンが含まれる薬です。
通常は脳から卵巣刺激ホルモン、黄体形成ホルモンが放出されることによって、女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンが放出され、それらの過程を経て卵子が発育し排卵がおこり、生理がくるという原理です。
ピルを服用すると、体内の女性ホルモンが安定し、脳からの女性ホルモン分泌の指示がなくなり、排卵や生理もなくなるため、妊娠の条件が揃わないことにより避妊に繋がります。
他にも子宮頚管粘膜が変化して精子の侵入を抑制したり、子宮内膜を薄くして卵子の着床を抑制するという作用もあり、これらは作用機序という、薬が生体に作用をあらわすメカニズムと呼ばれています。
ピルはこの作用から病気の予防になったり、生理に関するトラブルの改善が期待できたりする薬です。
種類
ピルには女性ホルモンが含まれる量によって、いくつかの種類があります。
種類により用途が異なるため、自分の判断で選ぶのではなく病院を受診し医師からの処方が必要です。
中用量ピル | 低用量ピル | 超低用量ピル | アフターピル | |
目的 | 生理周期の調整 | 避妊、PMS改善、生理痛緩和など | 緊急避妊 | |
エストロゲン量 | 高 > 低 | なし |
中用量ピル、低用量ピル、超低用量ピルと、順番にエストロゲンの量が減り副作用のリスクも少なくなっていき、継続的に服用することで女性ホルモンをコントロールできます。
また、アフターピルというエストロゲンが含まれていないピルは、緊急避妊薬として使用する目的の薬であり、性交後72時間以内に服用すると効果がある薬です。
ピルの効果
ピルにはさまざまな女性の悩みに対応する効果があり、目的によって使用するピルも変わってきます。
どんな症状に対処したいのか、目的は何かをはっきりさせてから受診すると、医師への説明もしやすいでしょう。
ここでは、ピルの服用でどのような効果が期待できるのか、詳しく解説していきます。
避妊
ピルに含まれるエストロゲンとプロゲステロンが脳に作用し、それぞれの分泌をコントロールすることにより、卵胞刺激ホルモンの分泌が抑制されて排卵がおこらず、避妊効果につながります。
避妊効果を求めてピルを服用する場合、低用量ピル、超低用量ピルの使用が一般的です。
飲み忘れに注意して、正しく服用した場合のピルの避妊率は99%以上とされていて、コンドームより高いですが、100%ではないことは注意してください。
また、ピルは避妊のみの効果であり性感染症の予防はできないため、コンドームとの併用も考えましょう。
PMSの緩和
月経前症候群(PMS)の改善にも低用量ピル、超低用量ピルが処方されることが多いです。
生理の前にイライラする・からだの不調があり生理が始まると治まる症状のことで、酷くなると日常生活に支障が出てきます。
PMSに悩んでいる女性も多いですが、ピルの服用で症状が改善される場合もあります。
PMSの主な原因であるホルモンバランスの乱れを整えて安定させることにより、症状の改善が期待できるためです。
病院を受診のうえで治療を目的として処方された場合は、保険適用となることもあります。
生理に関する効果
女性ホルモンのコントロールができるため、生理に関する困りごとも改善することができます。
子宮内膜から作られるプロスタグランジンは、子宮を収縮させて経血を押し出し痛みを引き起こす物質です。
このプロスタグランジンを減らすことにより、子宮内膜の厚さを抑制して経血量を少なくし、酷い生理痛や月経困難症の症状を緩和できます。
生理不順や過多月経、過少月経、頻発月経などのトラブルも、ピルによって生理周期や出血量を減らすことで改善が可能です。
休薬期間に消退出血と呼ばれる生理のような出血がおこりますが、いつ出血するのか予測しやすく、本来の生理より出血が少なくて期間も短いため心配はいりません。
また、生理を早めたり遅らせたりするのは中用量ピルで管理できるため、生理予定日にイベントなどの予定がある場合は医師に相談してみてください。
貧血の予防
過多月経などで生理の出血が多い場合は貧血になりがちですが、ピルで改善が可能です。
ピルに含まれるエストロゲンとプロゲステロンによって作られる子宮内膜は薄くなり、休薬期間の消退出血で子宮内膜から剥がれる量も少なくなって経血量が減ることになります。
出ていく血の量が減り、血液中の鉄分が失われる量も減ることで、結果的に生理による貧血を予防できる仕組みです。
病気に関する効果
ピルには女性特有の病気に関して症状の緩和や予防効果もあります。
例えば、子宮内膜症は通常とは違う場所に子宮内膜が発生してしまう、20~30代に多い病気です。
ピルの服用で生理周期を安定させたり、子宮内膜の厚みを薄くしたりする効果により、子宮内膜症の症状である酷い生理痛にも対応できます。
また、ピルの効果である排卵の抑制により卵巣を休ませるため、卵巣がんの予防にもなったり、子宮内膜の厚みを抑制することにより子宮体がんのリスクも下がったりする効果もあります。
その他の効果
前述の効果の他にもピルにより、以下の症状の改善が期待できる可能性があります。
- ニキビ・肌荒れ
- 多毛症
- 若年性更年期障害
ニキビ・肌荒れは、男性ホルモンが優位になりやすい体質からおこる脂質肌が原因となることが多く、皮脂の分泌は男性ホルモンや黄体ホルモン(プロゲステロン)を抑制できれば改善していきます。
ピルの服用で女性ホルモンが優位になり、プロゲステロンも通常より少なく保たれることで体質が変わり少しずつニキビができにくくなる仕組みです。
ただし、以前からあるニキビが治る効果ではなく、あくまでも服用後のニキビを防ぎやすくなると考えてください。
男性ホルモンが優位になっていることが原因の多毛は、同じ原理で効果がありますが、やはり服用後に生えてくる毛が細くなり目立たなくなるということです。
また、更年期障害にピルが有効という話もありますが、30代のプレ更年期や症状の予防には効果がある場合もあります。
40~50代のピル服用は副作用として血栓症のリスクが高まるため、超低用量ピルかホルモン補充療法というピルではない治療法が適しているケースが多く、医師に診断してもらって正しく治療してください。
更年期障害の前からピルを服用していた場合は、血栓症のリスクを考えてピルをやめる時期を医師と相談しましょう。
副作用
ピルには副作用やリスクがありますが、医師と相談の上正しい服用をしていれば回避できます。
吐き気や頭痛、胸の張り、下腹部痛などの副作用はマイナートラブルと呼ばれ、3ヵ月ほどの服用を続けて体内のホルモンバランスが安定してからだが慣れると治まる症状です。
また、発生率は高くはないですが、血栓症はピルの副作用として注意してください。
長時間座っている体勢が続く、水分不足、喫煙している、肥満、高血圧、他の疾患があるなどの人は、血栓症のリスクが高まるためピルの処方ができない場合があります。
ピルは医師の診断が必要となるため、受診の際に問診やいくつかの検査がおこなわれ、安全に処方できると判断されて初めて処方されます。
処方された後も定期的に通院と検査を受け、正しい服用を続けていれば血栓症のリスクは低くなるでしょう。
服用の注意
ピルは1日1回、毎日同じ時間に服用します。
どの時間かは決まりはないため、朝起きてすぐ、夜寝る前など、自分が飲み忘れないタイミングで飲む時間を決めてください。
飲み忘れてしまった場合は、気付いた時点ですぐ飲み、次からはまた同じ時間に飲むことになります。
避妊が目的の場合は飲み忘れにより避妊効果が薄れる場合があるため、特に注意してください。
1ヵ月分が1つのシートにまとめられていて、21錠タイプは休薬期間は飲まず、28錠タイプは偽薬というホルモンが入っていない薬を飲みます。
この休薬期間中に消退出血という生理に似た出血がありますが、出血量は少なく排卵がない生理とは違う出血です。
また、妊娠を望む場合はピルの服用をやめると1~3ヵ月ほどで排卵が再開し通常の生理が始まって妊娠が可能になります。
1シートを飲み切ってからやめることで、生理再開の目途がつきやすいでしょう。
PMSの改善や生理に関する症状に対しての服用の場合は、ピルをやめることで症状が再び現れる可能性もあるため、医師と相談してください。
まとめ
ピルには避妊以外にも、女性特有のさまざまな症状に効果がある薬です。
生理痛が酷いけどどうしたらいいのかわからないなど、一人で悩まず医師に相談することで、ピルにより解決するかもしれません。
病気の予防や生理以外の悩みにも対応できる可能性もあるため、ピルの効果を知ることにより快適な日常生活を送れるように、我慢するだけではなくピルに頼ることも考えてみてください。
三軒茶屋ウィメンズクリニックは、一人ひとりの悩みに寄り添い、日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、日本生殖医学会認定 生殖医療専門医をはじめとする資格を持つ院長を中心とし、スタッフと共に患者様と相談し合える婦人科を目指しております。
ピルの処方の際は事前の血液検査や子宮頸がん検査を実施し、安全な処方ができるように努めております。
ピルの服用を考えている人は、三軒茶屋ウィメンズクリニックへお気軽にご相談ください。
#ピル #避妊 #PMS
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