不妊治療でピルが処方される理由とは?知っておいてほしい注意点や副作用も紹介
ピルといえば避妊や月経移動など使われるイメージを持っている人も多いでしょう。
そんなピルですが、不妊治療でも処方されることがあります。
不妊治療で処方されるピルにはどのような理由があるのでしょうか。
この記事では不妊治療でピルが処方される理由や、知っておいてほしい注意点や副作用についても紹介します。
不妊治療を検討している人はぜひ最後までご覧ください。
そもそもピルとは?
そもそもピルとは、女性の卵巣で作られ女性ホルモンとも呼ばれる、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類が主成分となっている経口避妊薬です。
経口避妊薬という名前のとおり、適切に服用すれば排卵が止まるため性行為を行っても卵子と精子が受精することはありません。
このイメージが先行しているため、ピル=避妊と思われがちですが、ピルには避妊以外にも以下のような効果が期待できます。
- 月経痛の軽減
- 月経不順の緩和
- PMS(月経前の精神的・身体的症状)の改善
- 月経血量減少による貧血の改善
- 子宮内膜症の予防と改善
- 月経予定日のコントロール など
実際にピルを服用している女性は、避妊よりも上記のような効果を目的としている場合が多いです。
「ピルを服用している=不妊治療が必要な身体になる」は間違い
ピルを服用していると排卵が止まるため、自然妊娠が出来ず必ず不妊治療が必要になるかもしれないと思っている人がいるかもしれませんが、それは間違いです。
ピルの服用を辞めて1〜2ヶ月程度(長くても半年)経過すれば、ピル服用前のように排卵が始まり自然妊娠できる可能性は十分にあります。
逆にピルを服用することで以下の3つの点から妊娠しやすい状態になる可能性があります。
- 卵子の元である卵母細胞の保管
- 卵巣の健康状態維持
- 子宮内膜症の予防と改善
そのため、現在ピルを服用していても将来の妊娠に悪影響はほぼなく、不妊治療が必要な身体になるといった認識も間違いです。
不妊治療でピルが処方される理由とは?
不妊治療でピルが処方されるのはおもに体外受精を行う場合です。
では、なぜ体外受精を行う際にピルが処方されるのか、その理由を4つ紹介します。
採卵前のピルは卵子の質を高める
体外受精でピルを最も多く処方されるのは採卵前です。
不妊治療中にもかかわらずピルを服用し、排卵を止めるのは矛盾しているように思うかもしれません。
卵巣では常に卵子の元である卵胞をいくつも育てており、丁度よい大きさになったものが排卵されるようになってします。
ここでピルを服用し、排卵を止めることで丁度よい大きさになった卵子が複数でき、一度の採卵で複数の卵子を採取できるようになります。
このようにピルは採卵に向けた準備として処方されることがあり、服用することで質の高い卵子の採取が可能です。
体外受精を行うにあたり、質のよい卵子は受精後も質のよい胚(受精卵)になる可能性が高く、胚移植後も着床しやすいです。
胚移植は胚自体にも負担がかかるため、質の低い胚しかなかった場合は再度採卵と受精が必要になります。
採卵後のピルは子宮内膜を厚くする
採卵後にピルが処方される理由は2つあり、1つ目は子宮内膜を厚くするためです。
ピルは先程も触れたとおり、卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類の女性ホルモンが主成分となっており、不足した女性ホルモンを補填できます。
特に黄体ホルモンは子宮内膜を厚く、柔らかくする働きがあり、子宮内膜は「受精卵のベッド」と表現されることもある程、着床に欠かせない部分です。
黄体ホルモンが少なく十分に子宮内膜が厚くない場合、着床しにくかったり、着床しても剥がれやすかったりします。
また、不妊原因の1つとして、受精卵が着床しても流れてしまい、妊娠の継続が難しい体質である不育症があります。
不育症になる原因はさまざまありますが、そのうちの1つが黄体ホルモンの不足です。
そのためピルを服用し、黄体ホルモンを補填することで、妊娠しやすいだけではなく妊娠を継続しやすい身体づくりが可能になります。
採卵後の卵巣を休ませる
採卵後にピルが処方される2つ目の理由は、卵巣を休ませることです。
基本的には、月経が終われば卵胞は排出されるものですが、排卵誘発剤を使用した場合は卵胞が排出されずに体内に残る遺残卵胞が出てしまいます。
遺残卵胞とは、前周期で排卵も消失もせずに残った卵胞のことです。
遺残卵胞がある状態では、次の新しい卵胞の成長を妨げてしまったり、採卵しても卵胞のなかに卵子がない状態になったりします。
一般的には、遺残卵胞がある状態では受精が難しく、遺残卵胞が消えるまで体外受精を見送ることが多いです。
そこで、ピルを服用し卵巣を休ませることで、次の採卵の際にまた質のよい卵子を採取できる可能性が高くなります。
ピルを服用して卵巣を休ませている期間は不妊治療も休みになり、早く妊娠したい人は歯痒い時間かもしれませんが、次の体外受精の成功率を上げるためだと思いましょう。
不妊治療のスケジュールを立てやすくする
ピルを服用すると期待できる作用の1つに月経予定日のコントロールがあります。
ピルはホルモンが含まれた実薬21日間、その後7日間の休薬をすることで月経周期のコントロールが可能です
コントロールできれば、次いつ月経が来るのかを逆算できるようになり、女性の排卵や月経周期にあわせて治療を行う体外受精などのスケジュールが立てやすくなります。
仕事をしている人にとっては、不妊治療のスケジュールが立てられれば休暇の相談などができるため不妊治療との両立がしやすくなるでしょう。
知っておいてほしいピルの注意点と副作用
月経に悩んでいる人だけではなく不妊治療中の人にも利点の多いピルですが、服用する際には知っておいてほしい注意点や副作用があります。
副作用がひどい場合などは薬の変更などの処置が必要になる可能性もあるため、すぐに医師へ相談しましょう。
副作用のなかでは最も多い吐き気・頭痛・倦怠感
ピルを服用した際の副作用のなかで最も多いのが吐き気・頭痛・倦怠感の3つです。
全ての症状が出る人もいますが、どれか1つの症状のみが出ることもあります。
このような副作用は卵胞ホルモンとも呼ばれるエストロゲンが原因で、ピルの服用をはじめて3ヶ月の間に起きやすいです。
殆どの場合は、服用を続けることで症状はなくなります。
ただ、どうしても我慢できない、日常生活に支障が出る場合は吐気止めや痛み止めを処方してもらったりピルの種類を変えてもらったりすることで改善することもあります。
胸がはる乳房痛
月経前に胸が張って痛いと感じる人もいるかもしれませんが、同じような痛みがピル服用中に起きる可能性があります。
こちらも服用から3ヶ月を過ぎると改善することが殆どで、少し気になる程度であればそのままにしても問題ありません。
どうしても痛い場合は医師に相談してみましょう。
気分の落ち込みたひどい眠気
ピルの飲み始めに感じやすい症状で急に不安になる鬱のような症状が出たり、ひどい眠気に襲われてしまったりする場合があります。
ピルを服用することによってホルモン量が変化するため、その変化に身体が付いていけずに気分の落ち込みやひどい眠気を引き起こします。
ピル服用後のホルモン量に身体が慣れれば、症状は少しずつ改善していく場合が多いです。
症状が改善するのは3ヶ月が目安となっており、3ヶ月が経過しても症状が改善しない、書状が重いと感じる場合は、医師にピルの服用中止や変更を相談してみましょう。
飲み始めに見られる不正出血
ピルの飲み始めに約20%程度の人に見られるのが不正出血です。
不正出血とは、月経期ではない時期に性器から出血することで、ピル服用によるホルモン量の変化や病気など理由はさまざまです。
服用開始から3ヶ月程度経過して、症状に改善が見られるようであれば問題ありません。
しかし、出血が続く場合はピル服用によるホルモン量の変化以外の病気などの可能性もあるため、不安がある場合はすぐに医師へ相談してください。
黄体ホルモンによるむくみ
ピルに含まれる黄体ホルモンには、体内に水分を溜め込みやすくする作用があり、むくみが発生しやすくなります。
「ピルを服用すると太る」と聞いたことがある人もいるでしょう。
これは太る(脂肪が増える)のではなく、むくんで太く見えてしまう状態であり、よく太ったと勘違いされてしまいます。
むくみを解消するためには、身体を冷やさず、ビタミン・ミネラル・たんぱく質などを積極的に食事に取り込むようにしましょう。
逆に、むくみやすくなる塩分やアルコールなどは避けるのがおすすめです。
血液が血管内で固まってしまう血栓症
ピルを服用するうえで最も注意する必要がある副作用・注意点が、血液が血管内で固まってしまう血栓症です。
血栓で血管が詰まってしまうと、詰まる場所によっては脳梗塞や心筋梗塞などの危険があります。
特に血栓ができやすい人に対してはピルの処方を控える場合も多く、血栓症の発症リスクを低くするためには以下の点を意識してみましょう。
- 小まめな水分補給
- 煙草を吸わない
- お酒を飲み過ぎない
また、激しい頭痛や舌のもつれなどを感じた場合は、すぐにピルの服用を中止してできるだけ早く医師へ相談してください。
ピルの服用ができない人の特徴
ピルはメリットも多いですが、前述したとおり副作用が起きることもあり、なかには血栓症のような命に関わる場合もあります。
重篤な副作用を引き起こすリスクの高いと判断された場合は、ピルの服用ができない可能性が高いです。
ピルの服用ができない人の特徴は以下のとおりです。
- 初経(初めての月経)がまだ
- 閉経している
- 高血圧症である
- 高血圧症を薬でコントロールできない
- 糖尿病
- 肥満
- 肝機能障害や臓の働きや悪い
- 子宮頸がんや乳がんの治療中
- 授乳中
- 産後すぐ
- 35歳以上で1日15本以上喫煙している
- 前兆のある偏頭痛がある など
ほかにも、血液検査などの結果によってはピルの服用が難しい人もいます。
病院によっては、ピルではない代替治療を提案してもらえることもあるでしょう。
まとめ
ピルは排卵を止めることができるため、避妊や月経に関する悩みなどを解決するために処方されますが、不妊治療中にも処方されることがあります。
不妊治療中にピルが処方される理由としては、卵子の質を高めたり子宮内膜を厚くしたりさまざまな効果が期待できるためです。
一方で、ピルには気分の落ち込みや血栓症などの副作用リスクもあり、なかには命に関わることもあります。
ピルの処方に関しては、血液検査の結果などを見ながら医師と相談して進めて行きましょう。
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