不妊治療別の平均金額とは?保険適用になったメリット・デメリットも解説
不妊治療は2022年4月以前に保険適用になり、以前よりは経済負担も少なく取り組める治療となりました。
ただ、不妊治療を始めたいと思っていても大体どれくらいの金額で治療を受けられるのか、詳しく知らない人も多いかもしれません。
この記事では、不妊治療別の平均金額や保険適用になったメリット・デメリットなどを解説していきます。
これから不妊治療を始めようと思っている人、不妊治療の費用面を詳しく知りたい人はぜひ最後までご覧ください。
不妊治療別の平均金額
不妊治療は不妊検査を含め5つの治療法に分かれているため、ここでは治療別の平均金額について解説します。
ただ、こちらで紹介するのはあくまでも平均金額であり、使用する薬剤などによっては金額が変動する可能性があります。
詳細な金額については、不妊治療を受ける病院でしっかりと説明を受けるようにしてください。
不妊治療前の各種検査代:1回~約2万円
不妊治療を始める前には、必ず不妊の原因はなにか、生殖能力がどの程度あるのかを確認するために不妊検査を行います。
主な検査項目は以下のとおりです。
女性のみ | 男性のみ |
・子宮頸部細胞診 ・頸管クラミジア抗原検査 ・抗精子抗体検査 ・一般血液検査(血算・生化) ・各種ホルモン検査 ・フーナーテスト など | ・精液検査 ・尿検査 ・超音波検査 ・血液検査 など |
検査によって金額は変動しますが、1回数百円〜約2万円です。
病院によって、行われる検査項目が少し違ったり、検査結果によって追加での検査が必要になったり、人によってばらつきが出やすい部分です。
ただ、こちらの検査結果を元に今後の不妊治療方針や方法が決まるため、しっかりと検査してもらうようにしましょう。
タイミング法:1回約1~3万円
タイミング法は、女性が最も妊娠しやすい排卵日を予想して、その周辺で性行為を行い妊娠を目指す治療法です。
超音波検査や血中ホルモン値などを参考に排卵日を予想し、必要であれば排卵誘発剤を使用する場合もあります。
タイミング法ではおもに、排卵を予測するための検査代が必要になるため、1回約1〜3万円となっています。
女性の身体としても最も負担が少ない方法であり、ほかの不妊治療と比べても最も費用負担の低い治療です。
人工受精:1周期約2~3万円
人工受精とは、男性から採取した精液を洗浄濃縮して運動量の多い精子を排卵時期の女性の子宮内に注入する治療法です。
人工受精は、男性から採取した精液の洗浄濃縮・超音波検査や血中ホルモン値による排卵日の予想・子宮内への注入を行い、1周期約2〜3万円となっています。
人工受精も比較的自然妊娠の形に近く、医師が行うのは精子の注入までなので、女性の身体にも比較的負担の少ない治療方法です。
体外授精:採卵1回約10~13万円
体外授精とは、卵子と精子を取り出し、培養液のなかで卵子に精子をふりかけ授精した胚を妊娠しやすい時期に子宮内に戻す治療法です。
子宮内に戻すタイミングは子宮内膜の状態などによって検討され、すぐに戻せる場合は問題ありませんが、次の生理周期まで待つ場合、胚は凍結保存されます。
採卵数や培養・凍結保存を行う胚の数、胚移植の方法などによって金額は変動しますが、採卵1回約10〜13万円となっています。
体外授精からは保険が適用されても高額になりやすくなり、1ヶ月あたりの医療費自己負担額が高額医療制度の上限を超えることも出てくるでしょう。
そうなると、自己負担額を超えた医療費分は戻ってくるため、治療とあわせて確定申告を忘れないようにしましょう。
顕微授精:1回約15~21万円
顕微授精は体外受精の1種であり、卵子に精子を直接注入して授精させ、授精した胚を妊娠しやすい時期の子宮に戻す治療方法です。
体外受精同様に、子宮内膜の状態によっては次の生理周期まで待つ必要があり、その間胚は凍結保存されます。
顕微授精は、不妊治療のなかでは最も成功率が高いとされていますが、必要となる費用も高く1回約15〜21万円です。
一度に授精させる卵子の数が多くなるほど高額になりますが、子宮内に戻すのは1回あたり1個と決まっています。
また、採卵方法など選ぶ治療料方法などによってもう少し高額になる場合もあります。
こちらも1ヶ月あたりの医療費自己負担額が高額医療制度の上限を超えることが考えられるため、申請を忘れないようにしましょう。
2022年4月から不妊治療は保険適用に
不妊治療は2022年4月から保険適用になり、窓口での支払が3割負担になったり、高額医療費制度が利用できるようになりました。
ただ、どのような治療でも保険が適用されるわけではありません。
ここでは、保険適用になる不妊治療や条件について解説します。
保険適用になる不妊治療
保険適用になる主な不妊治療は以下のとおりです。
- 一部の不妊検査
- タイミング法
- 人工受精
- 採卵
- 採精
- 体外授精
- 顕微授精
- 受精卵・胚培養
- 胚凍結保存
- 胚移植 など
体外授精や顕微授精にあたる生殖補助医療はオプション治療が一部保険適用になり、保険適用外ではあるものの先進医療を保険と併用できる場合があります。
先進医療とは、厚生労働省に認められた医療で、保険適用の治療を受けながら医師が必要性と合理性を認めた場合に行われます。
基本は保険適用外になる先進医療ですが、通常の治療と共通する診察や検査などの費用は保険適用の対象となる場合もあるため、医師に確認しながら進めて行きましょう。
保険適用になるための条件
不妊治療を保険適用で受けるためには年齢や回数などの条件を満たす必要があります。
男性に関しては年齢制限はありませんが、女性に関しては不妊治療開始時において43歳未満の場合に保険が適用されます。
そして回数制限は体外受精と顕微授精を行う際に適用され、以下の表のように女性の年齢によって保険適用となる回数が異なるため注意してください。
初めての治療開始時の女性の年齢 | 回数上限(1子ごと) |
40歳未満 | 通算6回まで |
40~43歳未満 | 通算3回まで |
不妊治療の保険適用に女性の年齢制限があるのは、43歳頃になると体外受精や顕微授精の成功率が大幅に下がってしまうためです。
不妊治療が保険適用になったメリット・デメリット
不妊治療が保険適用になったことで、さまざまメリットを享受できますが同時にデメリットも生まれました。
ここでは、不妊治療が保険適用になったことによるメリット3つとデメリット2つを解説します。
メリット1.窓口負担が3割に軽減される
不妊治療が保険適用になった最大のメリットが、病院の窓口負担が3割に軽減される点です。
不妊治療は通院回数も多く、1回あたりの治療費も決して安いわけではありません。
一番安価といわれるタイミング法でも1回あたり1〜3万円が必要です。
窓口負担が3割になったことで、不妊治療の直接的な経済負担の軽減になり、いままで経済的な理由で不妊治療を諦めていた人でも安心して治療を受けられるようになりました。
メリット2.高額医療費制度の対象となる
不妊治療が保険適用になったことで、高額医療費制度の対象にもなりました。
高額医療費制度は所得別に設けられた1ヶ月あたりの医療費自己負担額の上限を超えた場合、医療費の負担を軽減できる制度です。
以下の表は70歳未満の人が高額医療費制度を利用する際の自己負担限度額です。
所得区分 | 自己負担限度額 |
①区分ア 年収約1,160円~ | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% |
②区分イ 年収約770~1,160万円 | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% |
③区分ウ 年収約370~770万円 | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% |
④区分エ 年収約370万円以下 | 57,600円 |
⑤区分オ(低所得者) 住民税非課税世帯 | 35,400円 |
出典元:厚生労働省
不妊治療のなかでも高額になりやすい体外受精や顕微授精は1カ月の自己負担限度額を超える可能性が高いです。
超えた場合は申請が必要になるため、忘れず申請するようにしてください。
メリット3.施設間の費用格差がなくなる
保険適用前の自費治療のときには、施設ごとに自由に金額設定ができていました。
そのため、同じ不妊治療でも高額な施設とリーズナブルな施設がある状態でした。
これが保険適用になったことで、費用の一律化がされたため「安いから仕方なくこの病院で治療を……」ではなく、治療内容や立地など希望する病院での治療が可能です。
デメリット1.特定不妊治療助成制度が廃止になった
2022年4月以前は国が特定不妊治療助成金制度を行っており、体外受精や顕微授精を行うと1回あたり30万円が貰えました。
しかし、こちらは2022年4月に不妊治療が保険適用になったことで、廃止となっています。
治療内容や金額によっては、保険適用金額よりも特定不妊治療助成金の方が負担金額が少なる場合があります。
例えば、体外受精や顕微授精で治療費が40万かかった場合です。
保険適用で3割負担であれば負担金額は12万円ですが、30万円の助成金がもらえた場合の負担金額は10万円と2万円の差が生まれます。
このように保険適用になったからといって、誰でも負担金額が軽減したとはいえない部分があります。
デメリット3.混合診療ができない
混合診察とは、保険適用の治療は保険適用金額で支払い、保険適用外の治療は全額自己負担で支払うといった費用が混合する状態です。
混合診察ができない点は不妊治療に限った話ではなく、保険適用の治療を受けている途中で保険適用外の治療や薬剤を使用することができません。
高度な医療技術を必要とする治療など一部例外はありますが、ごく一部です。
そうすると、治療や使用できる薬剤の選択肢が狭まってしまい、ほんとうはやりたい治療や使用したい薬剤があるのに別の方法を探さなければいけません。
まとめ
不妊治療別の平均金額で、最も安価なのがタイミング法の1回1〜3万円で、最も高価なのが顕微授精の1回15〜21万円です。
保険適用になり、窓口での負担は3割になりました。
不妊治療が保険適用になったことで不妊治療が高額医療費制度の対象になったり、施設間の費用格差がなくなったりしました。
不妊治療を進める際には、経済負担を理由に治療を諦めなくてもいいように、使用できる制度を駆使して治療を進めて行きましょう
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