妊活中に打つべきワクチンは?予防できる感染症や予防接種の目的も解説

妊活 ワクチン

妊活を始めるにあたって確認しておきたいのが、ワクチン接種です。

妊娠中に感染症にかかると、母体が重症化するだけでなく、胎児にも先天的な障害が残る恐れがあります。

しかし、なかには妊娠中に接種できないワクチンもあるため、妊娠前に必要な予防接種を済ませておくことが大切です。

この記事では、妊活中にしておくべきワクチンについて解説します。

予防できる感染症や予防接種の目的などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

妊活中に確認しておきたい予防できる感染症

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妊娠中の感染症は、母体だけでなく胎児にも深刻な影響を及ぼす場合があります。

妊娠前に予防接種や抗体検査を行い、感染症のリスクをできる限り回避することが大切です。

妊活中に確認しておきたい予防できる感染症は以下の通りです。

  • 風疹
  • 麻疹
  • 水痘(水ぼうそう)
  • B型肝炎
  • 子宮頸がん
  • 百日咳

ここでは上記6つの感染症についてそれぞれ解説します。

風疹

風疹は妊娠初期に感染すると『先天性風疹症候群(CRS)』を引き起こすリスクがあり、胎児に視覚・聴覚障害や心疾患などの重い障害をもたらす可能性があります。

妊娠中は予防接種が受けられないため、妊娠を希望する段階で抗体の有無を確認することが大切です。

抗体検査は血液検査で行われ、数日で結果が出ます。

抗体がない、または基準値より低い場合は、妊娠前にワクチンを接種しておきましょう。

接種後は2か月以上避妊が必要となるため、妊活のスケジュールと合わせて早めに確認しておくことをおすすめします。

麻疹

麻疹は非常に感染力が強く、妊娠中にかかると流産・早産・低出生体重などを引き起こすリスクがあります。

まれに胎児への感染が起こる場合もあり、妊婦さん自身も肺炎や脳炎といった重い合併症を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。

麻疹に対する抗体検査は血液検査で行われ、風疹と同様に2〜3日程度で結果がわかります。

抗体が不足している場合は、妊娠前に麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)の接種を検討しましょう。

水痘(水ぼうそう)

水痘ウイルスに妊娠中感染すると、母体は重症化しやすく、胎児にも先天性水痘症候群のリスクがあります。

この疾患にかかると奇形や発育不全、脳や目の異常などが現れることがあります。

多くの人は子ども時代に感染して抗体を持っていますが、不安な場合は妊娠前に抗体検査を受けておくと安心です。

抗体がなければ、妊娠前に予防接種を受けましょう。

B型肝炎

B型肝炎は血液や体液を介して感染するウイルス性肝炎で、母子感染のリスクがある感染症の一つです。

母体が感染している場合、生まれてすぐに新生児にワクチンを投与することで感染を予防できます。

しかし、妊娠中に感染すると劇症肝炎などの重篤な症状を引き起こすこともあります。

妊娠前の血液検査で抗体の有無や感染状況を把握し、必要に応じて予防接種を受けることが大切です。

抗体がない場合はワクチン接種によって予防が可能なため、早めに医療機関で相談しましょう。

子宮頸がん

子宮頸がんの主な原因であるHPV(ヒトパピローマウイルス)は、性交渉を通じて感染するウイルスです。

HPVに感染すると子宮頸部に異形成が起き、それが早産や低出生体重のリスクを高める要因となります。

また分娩時に産道を通じて新生児に感染すると、まれに呼吸器乳頭腫症を引き起こすこともあり注意が必要です。

HPVの有無は抗体検査ではなく、子宮頸部細胞診やHPV-DNA検査で確認されます。

妊娠前に検査を受け、必要に応じてHPVワクチン接種を済ませておくことが望ましいでしょう。

百日咳

百日咳は長期間続く強い咳が特徴の感染症で、特に新生児や乳児がかかると重症化する可能性があります。

成人では軽症で済むことが多く、知らないうちに周囲にうつしてしまうことも少なくありません。

妊婦さんが感染すると出生直後の新生児に感染する危険性があるため、妊婦さん自身が免疫を持っているか確認しておくことが大切です。

妊娠を希望する段階で医師に相談し、必要に応じてワクチン接種を検討しましょう。

妊活中の接種が推奨されるワクチン

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妊活中の接種が推奨されるワクチンは以下の通りです。

  • MMRワクチン
  • 水痘ワクチン
  • B型肝炎ワクチン
  • HPVワクチン
  • RSウイルスワクチン
  • 百日咳ワクチン

ここでは上記6つのワクチンについてそれぞれ解説します。

MMRワクチン

MMRワクチンは麻疹、風疹、おたふく風邪の3つの感染症に対応する混合ワクチンです。

これらの感染症は妊娠中にかかると母体や胎児に重大な影響を及ぼす可能性があるため、抗体が十分にあるか妊活中に確認しておくと安心です。

またMMRワクチンは生ワクチンに分類されるため、接種後は最低でも1か月、医療機関によっては2か月間の避妊が必要とされています。

スケジュールに余裕を持って、早めに接種を検討しましょう。

水痘ワクチン

水痘(みずぼうそう)は子どもの頃にかかった経験がある人が多いものの、妊娠中に感染すると重症化しやすく、胎児にも悪影響を及ぼす恐れがあります。

特に水痘ウイルスによる『先天性水痘症候群』は、胎児に皮膚の異常や四肢の形成異常、視覚・脳の障害などを引き起こす可能性があるため注意が必要です。

水痘ワクチンは生ワクチンのため、MMRワクチンと同様に接種後は2か月の避妊期間が必要です。

抗体が十分かどうかは血液検査で確認できるため、不安があれば早めに検査を受けることをおすすめします。

B型肝炎ワクチン

B型肝炎ウイルスは血液や体液を介して感染し、母子感染によって新生児がウイルスにかかる可能性があります。

生後すぐにワクチンを接種することで予防できますが、妊娠前に母親自身がワクチンを受けておくのも有効です。

B型肝炎ワクチンは不活化ワクチンのため、妊娠中でも接種可能です。

しかし計3回の接種が必要なため、妊活中にスケジュールを組んで接種を終えておくのが望ましいでしょう。

一般的には1回目の接種後に4週間空けて2回目、さらに20週間以上空けて3回目を行うといったスケジュールになります。

HPVワクチン

HPVワクチンは子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)感染を防ぐためのワクチンで、妊娠希望の有無にかかわらず早めの接種が望ましいとされています。

HPVは主に性的接触を介して感染し、子宮頸がんを発症するリスクが高まります。

ワクチンは不活化ワクチンで安全性が高いとされていますが、妊娠中の接種はなるべく避けた方が良いでしょう。

15歳以上では計3回の接種が必要で、1回目の接種から2か月後に2回目、さらにその6か月後に3回目を接種するというスケジュールが一般的です。

妊娠を計画している場合は、なるべく早めにワクチン接種のスケジュールを組み立てましょう。

RSウイルスワクチン

RSウイルスは、乳幼児にとって重症化しやすい呼吸器感染症を引き起こすウイルスです。

生後6か月未満の新生児には直接ワクチン接種ができないため、妊娠中の母親がワクチンを接種することで抗体を胎児に移行させ、生後の感染を予防します。

妊娠24〜36週の間に接種するのが一般的で、抗体は胎盤を通じて胎児に届けられ、生後6か月頃まで効果が持続するといわれています。

重篤な副反応は少なく安全性は高いとされていますが、異変を感じた場合はすぐに医師に相談しましょう。

早産傾向のある妊婦さんは妊娠24週頃、そうでない妊婦さんは妊娠28週から36週までにワクチンを接種すると有効性が高くなるとされています。

百日咳ワクチン

百日咳は大人では軽症で済むことが多いものの、新生児が感染すると重症化するリスクが高い感染症です。

母体からの抗体移行によって新生児の感染を予防できるため、妊活中や妊娠中のワクチン接種が重要です。

現在、日本で接種できる百日咳ワクチンには小児用のDTaPと、海外製の成人用Tdap(日本では未承認)があり、いずれも不活化ワクチンで妊婦にも安全に使用できます。

出産前にしっかり抗体を移行させるためにも、妊娠27〜36週の接種が推奨されています。

妊活中・妊娠中にワクチンを接種する目的

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感染症は妊婦さん本人や胎児に深刻な影響を及ぼすことがありますが、適切な時期にワクチンを接種することで、そのリスクを大きく下げられます。

接種の目的は大きく3つに分けられます。

  • 胎児の異常を防ぐため
  • 母体の重症化を防ぐため
  • 胎盤を通じて胎児に抗体を送るため

ここでは上記3つの目的についてそれぞれ解説します。

胎児の異常を防ぐため

妊娠初期は胎児の重要な器官が作られる時期で、この時期に一部の感染症にかかると、胎児に先天的な障害が現れる恐れがあります。

特に知られているのが『先天性風疹症候群』で、妊婦さんが風疹に感染すると、新生児に心疾患・難聴・白内障などの重い異常が出ることがあります。

風疹の予防にはワクチンが効果的ですが、妊娠中には接種できないため、妊娠を計画している段階で抗体検査を受けて必要に応じて予防接種を済ませておくことが大切です。

水痘や麻疹なども同様に、胎児の健康に影響するリスクがあるため、事前の対策が非常に重要です。

母体の重症化を防ぐため

妊娠中はホルモンの変化や免疫力の低下により、感染症にかかると重症化しやすくなる傾向があります。

例えばインフルエンザに感染した妊婦さんは、非妊娠時に比べて入院のリスクが高くなり、流産や早産、低出生体重児の原因となることがあります。

また新型コロナウイルス感染症でも、妊婦が重症化するリスクが高いことが報告されており、集中治療室への入院や死亡リスクも上昇するのです。

こうした母体の重症化を防ぐためにも、ワクチン接種をしておくことが大切です。

胎盤を通じて胎児に抗体を送るため

妊娠中にワクチンを接種することで、母体が作った抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、生まれてからの感染症予防につながる場合があります。

代表的なのは百日咳とRSウイルスに対するワクチンです。

百日咳は生後6か月未満の新生児が感染すると重症化することがあり、時に命に関わることもあります。

しかし妊婦さんがワクチンを接種することで母体から抗体が移行し、健康的な新生児を産み育てることにつながるのです。

RSウイルスワクチンも同様に、母体からの抗体移行により、生後半年までの重症感染リスクを大幅に軽減できることが明らかになっています。

妊活中・妊娠中のワクチン接種費用の助成制度

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妊活中・妊娠中に受けるワクチン接種は、助成制度を利用して費用を抑えることが可能です。

自治体によって提供している助成制度の内容は異なりますが、例えば世田谷区では麻疹風疹混合ワクチンまたは風疹ワクチンの接種費用助成を行っています。

助成対象者は妊娠を希望する女性またはその配偶者や同居者となっており、3,000〜5,000円の助成を受けられます。

助成対象者や助成内容、また助成制度の有無は自治体によって異なるため、お住まいの地域の自治体の公式ホームページをチェックするか、保健所に直接問い合わせてみてください。

まとめ

妊活中に必ず行っておきたいのが、風疹や麻疹、水痘といった感染症に対応するワクチンの接種です。

感染すると妊婦さん自身のみでなく、胎児にも悪影響が及ぶ恐れがあります。

胎児の異常や母体の重症化を防ぎ、さらに胎児に抗体を送るためにも、必要に応じてワクチン接種を検討してみてください。

三軒茶屋ウィメンズクリニックでは、風疹抗体検査や麻疹風疹混合ワクチンに対応しています。

患者さん一人ひとりに合った診療を行っているため、妊活に関してお悩みがある方はぜひ当院までご相談ください。

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