妊活中はビタミンDに注目!卵子の質や妊娠率との関係も解説

妊活をしていると、ビタミンDが良いと聞いたことがあるかもしれません。
しかし、ビタミンDが何に良いのか、どのような効果が期待できるのか、ご存じでしょうか?
ビタミンDは妊娠の成立前にも、妊娠後にも、重要な栄養素です。この記事では、妊活とビタミンDの関係について、詳しく解説します。
妊娠を希望する方、卵子や精子の質、妊娠率を上げたい方は、ぜひ参考にしてください。
ビタミンDとは

ビタミンDは油に溶けやすく水には溶けにくい脂溶性ビタミンの一種で、骨の成長を促進したり、カルシウムの吸収を促進する役割を持っています。
血中のカルシウム濃度を調節する作用もあり、骨の健康を維持する重要な栄養素です。
男性ホルモンや女性ホルモンなどの、ステロイドホルモンとよく似た構造でもあり、ホルモンの一種であるとも考えられています。
ここでは、他にもさまざまあるビタミンDの働きについて、詳しく解説します。
ビタミンDの作用
ビタミンDは骨を作るビタミンとして認知されていますが、他にもさまざまな作用があることが明らかになっています。
骨や歯を形成する役割だけでなく、抗がん作用や免疫抑制作用、感染症や循環器疾患などの予防にも関わる可能性があると考えられています。
また、妊娠に関してもビタミンDが関係することが明らかになり、ビタミンDの摂取が着床率や妊娠継続率にも影響することがわかってきました。
ビタミンDはD2~D7までありますが、D4~D7は食品にほとんど含まれていないため、一般的にビタミンDと呼ばれるのはD2(きのこ類に多く含まれる)とD3(魚類に多く含まれる)の2つです。
体内のビタミンDが不足すると、以下のような病気のリスクが高まります。
- 骨軟化症
- 骨粗しょう症
- 感染症
- 循環器疾患
- 糖尿病
- 動脈硬化
- 自己免疫疾患
- 発がんリスクの増加 など
食品から摂取する以外にも、紫外線を浴びることによりビタミンDが生成されます。
日光を避けすぎるとビタミンD不足になってしまう可能性が高まるため、日焼けしない程度の日光浴は必要だと考えられています。
ビタミンDの摂取量目安
「25(OH)D(25ヒドロキシビタミンD)」という、血液中のビタミンDの濃度を調べる検査で、体内でどれくらいのビタミンDがストックされているかの量を知ることができます。
ビタミンD欠乏 | 0~20ng/mL |
ビタミンD不足 | 20~30ng/mL |
ビタミンD充足 | 30ng/mL以上 |
25(OH)D濃度が20ng/mL以下のビタミンD欠乏になると、骨粗しょう症を始めとした疾患のリスクが上がるため、20ng/mL以上を目指すことが推奨されています。
成人の男女ともに1日9.0マイクログラムが、食事からの摂取量目安です。
例えば乾燥しいたけは1個約5gで17マイクログラム、生の卵黄1個で12マイクログラムとなり、油分とともに摂取することで吸収率を上げることができます。
なお、食事からの摂取量目安は紫外線による皮膚からのビタミンD生成は別で確保するのが前提の数値のため、適度な日光浴を心がけたうえでの目安量となります。
(参照:「日本人の食事摂取基準(2025年版)ビタミン(脂溶性ビタミン)」厚生労働省)
ビタミンDの摂りすぎはどうなる?
ビタミンD不足はさまざまな病気のリスクがありますが、過剰摂取もまた高カルシウム血症の原因です。
過剰摂取すると血管の壁や心筋、肺、腎臓などに多量のカルシウム沈着が起こり、腎臓機能障害や軟組織の石灰化障害などの症状が現れる可能性があります。
ビタミンD耐容上限量は、成人の男女ともに100マイクログラムとされています。
日光を浴びることや食事で耐容上限量を超えて過剰摂取になる可能性はあまりありませんが、自己判断でサプリを摂りすぎてしまうとリスクにつながるため、用量には注意が必要です。
妊活中のビタミンDの摂取量について気になる場合は、かかりつけの婦人科で相談してみましょう。
妊活とビタミンD

ビタミンDは、妊活とも深い関係があります。
生殖機能維持や妊娠率などに影響することが明らかになり、妊活や不妊治療にもビタミンDの摂取は重要な役割があると考えられています。
(参照:「Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a prospective cohort study」)
卵子の質を上げる
ビタミンDは免疫力を高め、卵子の形成に影響を与えると考えられています。
ビタミンD受容体は卵巣や子宮内膜にも存在していて、卵胞の成熟や排卵、黄体形成などにも関係しているとされ、卵子の質が上がる可能性があるのです。
ただし、ビタミンDだけを摂って必ず卵子の質が上がるというわけではなく、あくまで補助的な位置づけです。
精子の運動能力を高める
25(OH)DによるビタミンD濃度が高いほど、運動能力を始めとする精子の質が高いことがわかっています。
精子の質が高いと、受精能力も強くなるため、妊活にとって重要な要素となります。
また、ビタミンD欠乏の男性は勃起不全(ED)を発症するリスクが高まるため、積極的にビタミンDを摂るように心がけましょう。
妊娠率を上げる
ビタミンDは妊娠に適した子宮内膜の環境を整える働きもあると考えられています。
妊娠するために必要な免疫状態を誘導する効果も期待でき、ビタミンDの補充により妊娠率を上げることにつながります。
また、受精卵の着床に必要な遺伝子の発現を誘導するともいわれ、ビタミンDが不足すると着床障害の原因となる可能性もあるため、注意が必要です。
妊娠と関係する病気
ビタミンD濃度が充足していると、以下のような病気の改善に効果が期待できます。
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
- 子宮内膜症
- 子宮筋腫 など
卵巣や子宮内膜などに存在するビタミンD受容体は、体内のさまざまな機能を調節するホルモンのような働きをするため、このような病気の改善にも役立ちます。
多嚢胞性卵巣症候群による排卵障害は、ビタミンDの補充により排卵率が上がることがわかっています。
ビタミンD濃度が低いと子宮にも影響する可能性があり、子宮内膜症や子宮筋腫のリスクが上がることもあるため、ビタミンDの適切な量を意識して摂るように心がけましょう。
女性のからだとビタミンD
ビタミンDは月経に関する症状に関係すると考えられています。
抗炎症作用をもつビタミンDは、生理痛を引き起こすプロスタグランジンを抑制して子宮の収縮を抑える作用があり、月経困難症の改善につながるのです。
また、精神的な安定を促すセロトニンの合成にも関わり、月経前症候群(PMS)の不安定な時期のイライラや不安感などの精神的な症状が出にくくなる効果が期待できます。
妊娠とビタミンD

ビタミンDは妊娠前はもちろん、妊娠してからも重要な栄養素として注目されています。
ここでは、妊娠とビタミンDの関係について、詳しく解説します。
出生率とビタミンD
ビタミンD濃度が充足している女性は、妊娠率とともに出生率も高いという研究があります。
ビタミンD濃度が欠乏または不足している女性と比較すると、十分なビタミンD濃度がある女性の方が出生率が高いとされています。
妊娠後から出産まで、ビタミンDは重要な役割を担っているのです。
(参照:「Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a systematic review and meta-analysis」)
妊娠合併症や胎児への影響
妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症にも、ビタミンDが関係しています。
これらの妊娠合併症を発症する方は、ビタミンD欠乏症であることが多いため、妊娠後のビタミンD摂取も重要です。
また、胎児発育不全や切迫早産など、胎児の成長にも密接な関係があり、著しいビタミンD欠乏症が認められた場合、胎児に影響が出る可能性もあります。
くる病(ビタミンDやカルシウム、リンの不足により骨が軟化する病気)や小児喘息、心血管疾患などの発症リスクが高まることにもつながるため、注意が必要です。
ビタミンDを摂取する方法

日本人、特に女性はビタミンD不足や欠乏になりやすいため、意識してビタミンDを摂取するように心がけましょう。
ビタミンDを摂取するには、以下のような方法があります。
ビタミンDを効果的に摂取する方法を知りたい方は、参考にしてください。
ビタミンDを多く含む食品をとる
ビタミンDは主にきのこ類に含まれるビタミンD2と、魚類に含まれるビタミンD3に分けられます。
ビタミンDを多く含む食材は、以下の通りです。
- きのこ類(きくらげ、乾燥しいたけ、まいたけ、エリンギなど)
- 魚類(あんこうの肝、しらす干し、紅鮭、イワシ、にしんなど)
- 乳製品(牛乳、チーズ各種など)
- 鶏卵
ビタミンDは脂溶性で油に溶けやすいため、動物性食品のように脂質を含む食材から摂取すると吸収されやすくなります。
きのこ類は、炒め物や揚げ物にすると吸収率を上げることができます。
一般的なスーパーで購入できる食材で調理もしやすいものが多く、少し意識するだけでビタミンDの摂取ができるでしょう。
ただし、他の食材もバランス良く取り入れて、偏った食生活にならないように注意してください。
ビタミンDは紫外線からも得られる
ビタミンDは紫外線を浴びることにより皮膚でコレステロールから合成され、ビタミンD3となります。
紫外線に当たるとはいえ、何時間も日光浴をする必要はありません。
週に2〜3回、5〜30分の短時間、身体の一部を日光に当てるだけで十分です。
紫外線の強い夏は短めに、冬や曇りの日は長めにするなど調節してみましょう。
女性は日焼けを避けて日焼け止めを塗る方が多いため、皮膚からのビタミンD生成が少ない傾向にあります。
日中の外出がほとんどない、夜勤が多いなどの方は、サプリメントの併用も検討してみましょう。
ビタミンDサプリメントを活用する
ビタミンDを補充するサプリメントを活用して、ビタミンD欠乏を補うのもよいでしょう。
女性だけでなく、男性も飲む方が増えています。
ただし、ビタミンD濃度は個人差があるため、人それぞれ必要量は異なります。
サプリメントはビタミンDを濃縮していて、摂る量が多すぎると高カルシウム血症のリスクが高まるため、注意が必要です。
ビタミンDサプリメントを服用する際は、自分に合った量について医師に相談しましょう。
まとめ
ビタミンDは骨や歯を形成するとは知っていても、妊活に重要な役割があるとは知らない方も少なくありません。
卵子や精子の質を上げたり、着床を助けて妊娠率を上げたりする効果が期待でき、妊娠を望む方にはぜひ摂ってほしい栄養素です。
ビタミンDは妊娠前から妊娠後まで深く関係しているため、食事や日光浴、サプリメントの活用などを意識しましょう。
ただし、過剰摂取にならないように、摂取量には注意してください。
妊娠しやすい環境を作る助けになるように、上手にビタミンDを生活に取り入れましょう。
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